研究実績の概要 |
主要作物のひとつであるイネの根系は、主軸根、L型側根およびS型側根により構成されている。本研究では、この根系構造に着目し、根の重要な生理機能の一つである水の吸収と輸送の仕組みを解明することを目的としている。この研究は名古屋大学と西オーストラリア大学間の博士課程ジョイントディグリープログラムを利用して遂行しており、2020年度は西オーストラリア大学にて、ルートプレッシャープローブ装置を用いた吸水能力の指標となる水通導性(水の流れやすさ)の測定手法を習得した。実験材料には、西オーストラリア大学の人工気象室内で対照区および浸透圧ストレス区を設けて水耕栽培したイネ5品種から、浸透圧ストレスに対する根系生育の反応により選抜した3品種を用いた。各品種の節根を用いて、ルートプレッシャープローブ装置で水通導性の測定を行った。 さらに、本研究では水通導性を制御すると考えられる、アポプラストバリア形成を各構成根で比較した。当初は、ボン大学(ボン、ドイツ)に2ヶ月程度滞在し、根サンプルにおけるスベリンの定量をガスクロマトグラフィーおよび質量分析法で行う予定であった。しかし、新型コロナウイルスの影響により、ドイツへの渡航が困難となったため、根のサンプルのみをドイツに郵送し、測定結果を得た。サンプルの抽出等の準備は西オーストラリア大学で行った。 スベリンの他、カスパリー線およびリグニンの蓄積の観察は、西オーストラリア大学のCentre for Microscopy, Characterisation and Analysis (CMCA、顕微鏡センター)で行った。センターが保有するビブラトームで各異型根の切片を作成し、ベルベリン-アニリンブルー(カスパリー線)、フロログルシノール・塩酸(リグニン)で染色して顕微鏡下で観察を行った。
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