主要作物のひとつであるイネの根系は、主軸根、L型側根およびS型側根により構成されている。本研究では、この根系構造に着目し、根の重要な生理機能の一つである水の吸収と輸送の仕組みを解明することを目的としている。本年度は、前年度までにオーストラリアの西オーストラリア大学にて習得したルートプレッシャープローブ法による個根の水通導性測定システムを名古屋大学の所属研究室に導入した。 さらに、各構成根におけるアクアポリンの働きに着目し、さらに詳細な構成根による根系の水吸収メカニズムを明らかにすることを目指した。アクアポリンは水チャネルタンパク質として知られ、細胞・液胞膜上に存在し、細胞内外に水を透過させる働きを持つ。先行研究では、光や温度などの外部要因や、地上部の切断などによる内部要因等によりその発現が大きく影響されることが明らかとなっており、さらに各構成根におけるアクアポリン発現を測定した先行例はないため、測定手法についても検討する必要があった。そのため、構成根におけるアクアポリン遺伝子の発現量解析法の確立および各構成根におけるアクアポリン遺伝子およびタンパク質の発現解析および比較を行った。確立した解析法で測定した4種類のアクアポリンのmRNA相対発現量とウェスタンブロッティングにより検出したタンパク質発現量の傾向から、構成根の中では特にS型側根が根系の水吸収において相対的に高い貢献度を持つことが示唆された。これらは前年度に得られた結果とも一貫していた。以上より、本研究ではそれぞれの構成根が異なる水吸収能力を有し、根系の水吸収・輸送機能において異なる役割を担っている実態を明らかにした。
|