研究課題/領域番号 |
20J11414
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
間藤 芳允 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 多環状ポリマー / ポリカプロラクトン / スライドリング架橋 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、多環状/直鎖状ポリマー混合系による新規スライドリング (SR) 架橋法の開発である。これを達成するため、本年度は多環状ポリマーの新規合成手法の確立および多環状ポリマーの直鎖状ポリマーへの添加効果の調査を行った。 具体的には、モデルポリマーとしてポリカプロラクトン(PCL)を採用し、スピロ型多環状ポリマー(8の字、三つ葉型および四つ葉型ポリマー)の新規合成法を検討した。ここでは、鎖中心および末端にノルボルネニル基を有する直鎖状およびアーム数の異なる星型ポリマーを設計し調製した。続いて、これらを前駆体として、大希釈条件で分子内の連鎖的環化反応に付したところ、構造明確な各ポリマーが高効率で得られたことを確認した。さらに、前駆体の分子量を調節することで、環サイズの制御も達成した。本手法で得られた環サイズや環状ユニット数が異なる一連のポリマーを用いて系統的な物性評価も行った結果、多環状構造は溶液および固体物性に影響を与えることも明らかにした。 次に、「多環状ポリマーの直鎖状ポリマーへの添加効果」を調査した。ここでは、まず先行研究で確立した連鎖的環形成法により、環状ユニット数が異なる多環状PCLを合成した。続いて、分子量数万程度の直鎖状PCLに対して各種多環状PCLを5-10 wt% 添加し、フィルムを作製した。得られたフィルムの引張試験を行った結果、無添加のフィルムと比較して 3 環の多環状 PCL を添加したフィルムの靭性や破断伸びが向上することが示された。以上より、適切な環状ユニット数を有する多環状ポリマーは架橋点として作用し応力を分散することが示唆され、材料の機械的特性向上に貢献することを明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況として、多環状ポリマーの合成を達成した。また、直鎖状ポリマーへの添加効果も一部実証でき、今年度に「多環状ポリマーの直鎖状ポリマーへの添加効果」を詳細に調査できると期待される。今年度の目標とした環材料の精密合成に関して、学会発表や論文発表を行ったため、本研究課題はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、環サイズや環状ユニット数が異なる多環状ポリマーを用意し、「多環状ポリマーの直鎖状ポリマーへの添加効果」を系統的に調査する。これにより、「架橋点構造―ミクロ/マクロ構造―力学特性」の相関関係を明らかにする。具体的には、電子顕微鏡観察による架橋点の直接観察や、引張試験下での in situ 小角(広角)X 線散乱を駆使することでナノメートルオーダーでのミクロ・マクロ構造を系統的に評価する。以上を通して、自在な力学特性を有するSR 架橋エラストマーの分子設計指針を確立を目指す。最終的には、加熱や超音波により SR 架橋の再形成が見込めるため、超延性と同時に自己修復能や形状記憶能を有するエラストマーなどへの展開も検討する。
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