研究課題/領域番号 |
20J11425
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
喜多 航佑 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 非線形境界条件 / 非線形熱方程式 / 解の爆発 / 比較定理 / 非線形発展方程式 / 劣微分作用素 |
研究実績の概要 |
本年度は非線形境界条件を伴う非線形熱方程式の初期値境界値問題に対する数学的な基礎付けを与え,大域解の一様有界性を証明した.非線形境界条件を課したラプラシアンは,自乗可積分の空間の作用素としては定義域が一般に線形にならない為,非線形作用素として見做さねばならない.故に半線形放物型方程式に対して有効な手法であるデュハメルの原理による積分方程式への変換や,その積分方程式と線形半群の評価を用いた不動点定理の議論が適用できない.ここでは,劣微分作用素に支配される非線形発展方程式に対する抽象理論を用いて解の存在を証明した.また,ソボレフ劣臨界の非線形項を持つ非線形熱方程式の大域解が時間無限大で増大しないか,という問いを肯定的に解決した.斉次ディリクレ境界条件下においてはGiga(1986)やQuittner(1999)らによって解決されているが,適切性のときと同様に境界条件の非線形性によりこれらの手法は適用できない.ここでは,Ishii(1977)や\^Otani(1981)による劣微分作用素の差の項を持つ発展方程式に対する解の漸近挙動の理論を非線形境界条件に応用できるように修正することで大域解の有界性を導出した. また,多価の非線形項や非線形境界条件を許す広範な二階放物型方程式系に対する比較定理を構築した.従来の比較定理と異なり,境界条件の非線形性にある種の順序構造を導入することで,異なる境界条件や方程式の解の比較を可能にした.この比較定理の応用として原子炉モデル方程式の爆発解の存在に対する未解決問題を解決した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非線形境界条件下での基本的な解析(適切性・大域有界性等)は当初の予定通り順調に進んでおり,比較定理の構築は,今後のより実現象に沿った反応拡散方程式の解析において重要な役割を果たすと考えられる.従って,上記の評価とした.
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今後の研究の推進方策 |
今後は本年度の研究で構築した比較定理を用いて非線形境界条件を伴う非線形熱方程式の更なる解析を行う.本比較定理を用いることで,未開拓である非線形境界条件下での解の大まかな評価を,よく知られている斉次ディリクレ境界条件や斉次ノイマン境界条件下における解の評価から導出することが期待でき,例えば爆発解の爆発時刻の上から(下から)の評価などが導かれる.さらに,有界領域では藤田型非線形熱方程式の大域解の存在は境界条件によって異なることが知られているが,この事実と比較定理を用いることで全空間の藤田臨界指数に対応する臨界の境界条件の存在を明らかにする.
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