研究課題/領域番号 |
20J11467
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
永松 秀朗 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 付加加工技術 / 異種金属接合 / チタン合金 / マグネシウム合金 / アルミニウム合金 / 金属間化合物層 / 形状精度 / 冷却速度 |
研究実績の概要 |
Wire and arc additive manufacturing(WAAM)によってマグネシウム(Mg)合金の上にチタン(Ti)合金層を形成することを目的とした,積層手法の開発に取り組んできた。Ti, Mgは物理・化学的性質が大きく異なるため,溶融接合時に両材料の界面で脆弱な金属間化合物(IMC)が多数形成されてしまう。そこで,二合金間にアルミニウム(Al)合金を仲介させることで,主目的を達成しようと試みた。取り組んだ研究テーマは,WAAM積層条件が造形物外観・IMCに与える影響の調査(①Ti/Al合金の異種金属積層,②Al/Mg合金の異種金属積層)と,WAAM造形物の機能性を改善する手法の開発(③Al合金内部に形成される気孔欠陥の低減,④Mg合金造形壁の形状精度・造形能率・冷却効果の改善)の合計4つである。 ①,②では,WAAM積層条件や溶加材に含まれる元素量が異種金属境界部のIMCに与える影響を明らかにした。③では,WAAM積層条件における入熱量とWAAM-Al合金製造形物の内部欠陥の相関性を明らかにした上で,造形物内部の気孔欠陥低減に有効な手法を開発し,気欠陥率を約30%低減させることに成功した。④では,造形サポート材を用いたWAAM積層手法を提案した。提案手法によって,従来手法の約3倍(770cc/h)の積層能率条件にも関わらず,Mg合金を高精度造形できることを明らかにした。 ①の成果の一部は国際会議euspen’s21にてポスター発表する予定であり,ショートペーパはすでに受理されている。②の成果は国内学会(春季精密工学会)にて発表した(共著者の扱い)。③の成果の一部は国際会議ICPE2020でオンライン発表した。④の成果の一部は国内学会(春季精密工学会)でオンライン発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究目的は①異種金属材料を用いたWAAM技術の開発と②同種金属材料を用いたWAAM技術における課題解決の二つに大別することができ,それぞれ順調に進展したからである。 ①の当初の予定は,①-1:WAAMの積層条件がAl-Mg、Al-Ti合金の異種金属積層物に与える影響の調査、①-2:固相接合ベースのAMを用いた異種金属積層法の開発、以上二つの実験的取組みであった。これに対して,現在①-1は完遂した。①-2だが,摩擦肉盛法によるAl-Mg合金の異種金属積層に取り組んでおり,積層パラメータが積層物外観や境界層に与える影響を調査している。 しかし,①-1,①-2のいずれにおいても接合性に優れた異種金属積層物はまだ作製できていない。これは境界部に形成される脆弱な金属間化合物に起因する。そこで,現在私は,この状況を打破する画期的な異種金属積層法を考案し,それの実験的取り組みに着手している。また,実験装置の導入から実験手順までを包括した実験計画を立案し,着実に研究は進展している。 ②の当初の予定は,内部に冷水循環機構を設けた銅ブロックを造形中のMg合金造形物に接触させることで、造形物の冷却速度および造形精度を向上させることであった。これに対して私は,冷却水循環機構を有する銅製の積層補助材と,この銅ブロック積層補助材を用いたWAAM積層プロセスを開発した。また,この新しいWAAM積層プロセスにおける,WAAM積層条件が溶接アーク・積層物形状・結晶粒径・冷却効果に与える影響をそれぞれ明らかにした。 このように,私は研究計画に沿って着実に成果を得ている。また,それらの成果を国際会議・国内学会でそれぞれ報告した。さらに,現状の課題を解決する新しい研究計画を立案し,すでに実行している。以上のことから,本年度の研究は順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究が提案する,新しい異種金属積層手法のコンセプトと研究実施計画について述べる。従来の異種金属積層法では,材料Aの上層部に材料Bを積層していた。そのため,材料A-Bの界面で形成される金属間化合物層が積層物全体の強度の支配的要因となっていた。これに対して本研究では,一層目から両材料をそれぞれ選択的に積層する。これにより一層から最終層にかけて複雑な構造体が入り組んだ,例えば井桁構造のような積層物を完成させる。すなわち,溶融接合ではなく,構造的な強度によって積層物全体の強度を向上させることを狙いとする。 そこで,まず初めに,Ti/AlとAl/Tiの多層および多列積層を行い,WAAM積層条件が異種金属積層物に与える影響を調査する(6月)。次に,二つの複雑形状が入り組んだ構造物を作製し,引張・圧縮試験機を行う。また,実験的取り組みと並行して,有限要素法による強度解析にも取り組む。これにより,適切な構造体形状を事前に決定することができる(9月)。最後に,入り組んだ積層物の形状が積層物全体の構造的強度に与える影響を明らかにする。このとき,本研究に新しく導入する多軸ロボットアームによるWAAM積層システムを採用する。これによって,積層姿勢の自由度が大幅に向上するため,より複雑かつ構造的強度の高い積層物の創成が期待できる(12月)。 研究成果のアウトプットについて述べる。前年度の研究成果(Ti/Alの異種金属積層と外部強制冷却によるMg合金のWAAM積層手法)を国際ジャーナル誌にそれぞれ投稿する(6月末に投稿,9月末に受理されるのを目標とする)。また,Al/Mg合金の摩擦肉盛法と,上述したWAAMの新しい異種金属積層法については,それぞれ秋季精密工学会(9月),春季精密工学会(来年度末)で口頭発表する予定である。
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