麹は製麹中に必要以上に発熱する。本研究では製麹後期の最高品温状態で発現量が上昇し、発酵熱の生成に関与すると予想された黄麹菌における代替酸化酵素(Aox)の破壊株、過剰発現株を造成し、発熱への関与を調べた。 麹品温の温度の差は0.1度程度差の小さなものである事が見込まれた為、安定した製麹が行えるよう調整した上で品温の測定実験を行った。発現量や麹品温の予備的データからAoxA が発熱を生じる要因であり、aoxA 過剰発現株は親株と比べて品温が高まり、aoxA 破壊株では品温が低下するという結果を実験計画段階で想定していたが、これに反して、実際にはaoxA 高発現株では最高品温が親株と比べて低く、aoxA 破壊株では品温が僅かに高い傾向を示した。また、aoxA およびaoxBの双方を過剰発現させた株を造成した場合においてもaoxA 単独高発現と同様のに品温の低下が見られた。 aoxA 高発現株が実際に高発現株であるかリアルタイム定量PCRにてRNA転写量の確認を行ったところ、確かにaoxA の転写量が親株と比べて高いことを確認した。 また、aoxB 破壊株におけるaoxA 遺伝子の発現量についても調べたところ、親株と比較して米麹製麹中に発現量が低下していた。aoxB とaoxA 間は配列相同性が高いが、挙動の原因を確認できなかった。 aoxA の破壊により品温が上昇している為、Aoxは発酵熱への関与は無いことが示唆された。 現在、製麹中の遺伝子発現の確認を RNA-Seq にて行い、呼吸鎖や代謝関連遺伝子の発現を中心に解析を行っている。
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