安全な量子PIRプロトコルの構成とその理論限界の導出のため、今年度は以下の4つのテーマの研究を行った。 - 研究1. 「符号化されたデータベースにおける、量子プライベート情報検索の最適効率導出や最適プロトコル構成」。この研究は昨年度の研究「サーバーが結託する場合の量子プライベート情報検索の最適効率導出や最適プロトコル構成」を拡張した研究であり、符号化されたデータベース上においても安全な量子PIRプロトコルを構成しその理論限界を求めた。フィンランドのAalto大学やドイツのTUMunichの研究者との共同研究として行い、論文誌IEEE Journal on Selected Areas inCommunicationsに掲載した。 - 研究2. 「量子状態を送るための量子プライベート情報検索」。昨年度から同テーマの研究を続け、さらに拡張した。昨年度の研究成果では、純粋状態を送信する量子PIRプロトコルを提案したことに対し、今年度にはそのプロトコルを混合状態まで送信できるように拡張した。現在、論文誌PRX Quantumへ投稿中である。 - 研究3. 「対称プライベート情報検索と非完全秘密分散の同値性」。昨年度の研究成果をまとめ、国際学会2021 IEEE International Symposium on InformationTheoryで発表し、論文誌IEEE Journal on Selected Areas in Communicationsに掲載した。 - 研究4. 「量子対称プライベート情報検索と量子非完全秘密分散との同値性」。研究3の量子拡張として、古典情報を送るための量子対称PIRと量子非完全秘密分散の同値性に関する研究である。この同値性により、量子秘密分散から量子PIRプロトコルの構成とその理論限界の導出が可能になる。
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