研究課題
妊娠期に高脂肪食を摂取した母親から生まれた子は腸内細菌叢の組成変化や多様性の減少であるdysbiosisを引き起こし、疾患リスクが上昇することが報告されている。腸内細菌叢は宿主と相互作用しており、中でも小腸陰窩基底部のPaneth細胞は選択的殺菌活性を有するα-defensinを分泌することで腸内細菌叢を制御している。本研究は、母親の高脂肪食摂取が子のPaneth細胞の発達や腸内環境制御機能にどのように影響を与え、生体恒常性に関与するかについて、機序を解明することを目的とした。母親マウスに高脂肪食(脂肪分60 kcal%)もしくは通常食(脂肪分10 kcal%)を自由摂食させ、通常食摂取の父親マウスと交配し子マウスを作出した。前年度までに、通常食摂取の母親由来の子と比較して高脂肪食摂取の母親由来の子において、α-defensinを含む細胞質顆粒が未熟なPaneth細胞の割合が多いことを明らかにした。令和3年度は、前年度までに明らかにしたPaneth細胞の顆粒の発達不全がα-defensin分泌量にどのように関与するか解明するために、α-defensin量をsandwich ELISA法で測定すると高脂肪食摂取の母親由来の子で有意に低下していた。さらに、腸内細菌叢の全体像を明らかにするため16S rRNAメタゲノム解析を行うと通常食摂取の母親由来の子と比較して高脂肪食摂取の母親由来の子はβ多様性が異なり、α多様性が有意に低下するdysbiosisが起きていることが明らかになった。本研究により、母親の高脂肪食摂取によって子のPaneth細胞の顆粒の発達異常およびそれに伴うα-defensinの分泌量低下が引き起こされ、子の腸内細菌叢の多様性が減少することを明らかにし、Paneth細胞の発達が腸内細菌叢の成熟機序の一つであることを示した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻: 119 ページ: e2115230119
10.1073/pnas.2115230119