本年度はこれまで確立したアオミドロ類(アオミドロ属、シロゴニウム属及びテムノギラ属)培養株に対して寒天培地上で培養する手法と窒素源を減少させた培地で培養する有性生殖誘導法を試みた。その結果、日本産アオミドロ類は秋山ら(日本淡水藻図鑑、1977)が報告していた84種に加え日本新産13種と未記載種4種の存在が明らかとなった。それらのうち主要な系統にアメリカやイギリスなど海外の培養株保存施設から入手したアオミドロ類培養株を加えた41系統を系統解析に用いた。次世代シーケンサーを用いて得られたデータから葉緑体ゲノムをアセンブルし、葉緑体タンパク質をコードした88遺伝子のCDSを抽出した。それに基づく系統解析の結果、アオミドロ類の各クレード間の系統関係は高い統計的支持率で示され、シロゴニウム属とテムノギラ属の種はアオミドロ属のクレードに含まれた。また、祖先形質推定によってアオミドロ類はアオミドロ型の有性生殖様式を示す祖先からシロゴニウム型とテムノギラ型にそれぞれ独立に進化したものと推測された。それらの結果を踏まえ、アオミドロ類3属はすべてアオミドロ属に帰属させるべきであると結論した。 また、アオミドロ類の多くは2つの配偶子が接合して接合胞子を形成するが、一部の種は接合胞子の代わりに単一の配偶子から不動胞子を形成する。本研究で、静岡県下田市の水田から確立した培養株は、接合誘導すると不動胞子を形成した。この不動胞子には不規則な細孔模様が観察され、胞子嚢が膨張する点で他の不動胞子を形成するアオミドロ類とは区別された。
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