研究課題/領域番号 |
20J11550
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
安部 大樹 北海道大学, 農学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 食中毒 / リスク評価 / 感染確率 / カンピロバクター |
研究実績の概要 |
本研究は、人体内における細菌の生存/死滅挙動のバラつきを確率論的モデルで表すことで,食中毒の発症確率を予測するモデルを開発することを目標としている。各消化器官中におけるCampylobacter jejuniの細菌挙動を明らかにした。各消化過程におけるCampylobacter jejuniの細菌挙動の予測モデルは投稿準備中もしくは投稿中で、特に、Campylobacter jejuniの腸内上皮細胞侵入予測モデルでは簡易的に感染確率を予測する計算方法を提示し(Applied Environment and Microbiologyに掲載済)、実際に報告されている食中毒事故における摂取菌数と比較することで、新たな用量反応モデルの構築の提案とその妥当性を示した。低用量の範囲で、食中毒事故から推定されていた用量反応関係の推定値と同様の結果を示すことができた。また,従来の手法では推定することが難しかった年齢による用量反応関係の違いや食べ物の形状(液状、固形)の違いによる用量反応関係(感染確率)の違いを推定することができた。現在、国際論文としてScientific reportに投稿中で、Pre-printとして公開中である。さらに現在、オランダのワーヘニンゲン大学にて,各消化過程における統合アルゴリズムの構築方法の学習を目的に,定量的食品微生物リスク評価モデルの研究活動に従事している。次年度には、定量的食品微生物リスク評価モデルの手法を取り入れ、「胃内での死滅」、「腸内での増殖」、「腸内組織への侵入」を考慮に入れた感染機構基盤用量反応モデルの作成を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究1:摂食細菌数と胃通過細菌数の関係の解明】 人工胃液中でのカンピロバクターの死滅挙動を元に,胃を通過する細菌数を測定した。ベイズ推定を用いて11菌株のカンピロバクター間の死滅特性のバラツキを表現することで、カンピロバクター全体のバラツキを推定し、一般的なカンピロバクターの胃内での死滅挙動を推定する予測モデルを作成した。現在、国際論文として投稿準備中である。 【研究2:腸内細菌叢との競合環境下におけるカンピロバクターの細菌数変化の解明】 胆汁酸含む人工小腸液中において,カンピロバクターと小腸に存在する細菌群を共培養した。腸内細菌数の比率とカンピロバクターの生存菌数の変化の関係を明らかにし、それぞれの混合率における予測モデルを作成した。現在、Applied Environmental and Microbiologyに国際論文として投稿中である。 【研究3:小腸上皮細胞内へ侵入する細菌数の推定】 単層培養したヒト小腸上皮様細胞Caco-2細胞にカンピロバクターをばく露させ,細胞内に侵入した細菌数の経時変化を測定した。また,Caco-2細胞とばく露細菌数の比率と細胞内侵入菌数の関係を解明し、予測モデルを作成した。研究結果はApplied Environmental and Microbiologyにて掲載された。 【研究4:確率論的予測モデルの統合と検証】 胃内での死滅過程と腸内における細胞膜への侵入挙動における結果から感染確率を予測する確率論的計算アルゴリズムを開発した。現在、国際論文としてScientific reportに投稿中で、Pre-printとして公開中である。
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今後の研究の推進方策 |
各予測モデルの統合方法の学習を目的としてWageningen University and Researchとの共同研究も進行中で、次年度には、新しいリスクアセスメント手法を取り入れた「胃内での死滅」、「腸内での増殖」、「腸内組織への侵入」を考慮に入れた感染機構を基盤として新たな用量反応モデルの作成を行う。
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