研究実績の概要 |
本研究は、人体内における細菌の生存/死滅挙動のバラつきを確率論的モデルで表すことで,食中毒の発症確率を予測するモデルを開発することを目標としている。昨年度は各消化器官中におけるCampylobacter jejuniの細菌挙動を明らかにした。今年度は各消化管における細菌挙動の予測モデルを統合し,用量反応関係を推定,検証を行った。従来ではヒトを対象にした実験が必要であったが,年齢の違い(若年,老年)および食品の違い(液体,固体)による食中毒への感度の比較が可能な開発された予測手法を開発した。開発した感染確率予測モデルはApplied Environment and Microbiologyにて掲載済(https://doi.org/10.1128/AEM.01299-21)であり,国際学会(International Association for Food Protection)では分野賞を受賞した。加えて,調理過程におけるC. jejuniの生存挙動と喫食される際の推定菌数の予測モデルを開発した(Food Microbiologyに掲載済, https://doi.org/10.1016/j.fm.2021.103932)。ワーゲニンゲン大学では,喫食までの食中毒細菌の増減を推定し,最終的に食中毒を引き起こすかどうか予測することで,重要となる加工・流通・貯蔵プロセスの比較方法の開発を行った(国際共同研究の論文として投稿準備中)。これらの小研究により,本研究の大目標である、「食品が農場で生産されてから消費者に喫食され,その消化過程に基づいて、病原菌が食中毒を引き起こすかどうか」の一連の流れについて予測モデルが開発され,分析することが可能となった。
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