研究課題/領域番号 |
20J11604
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
柴田 聡美 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | ペロブスカイト / アルケンの酸化的切断反応 |
研究実績の概要 |
分子状酸素を酸化剤とした物質変換は副生成物を出さない環境調和型プロセスであるため、その触媒系の開発は重要な課題である。これまでの研究において、高原子価鉄を含むペロブスカイト型酸化物BaFeO3-δを触媒として用いれば、アダマンタンなどのアルカンの選択酸化反応が高効率で進行することを見出してきた。しかし、適用可能な反応基質は主にアルカンの第3級および第2級C-H結合であり、アルカンの第1級のC-H結合の活性化、あるいはアルケンやヘテロ原子の酸化などの高難度の酸化反応の達成には至っていない。そこで本研究では、高原子価の鉄を含むペロブスカイト型酸化物BaFeO3-δの構成元素や活性サイト制御によるペロブスカイト型酸化物の高機能化と、アルケンやヘテロ原子の酸化等の高難度酸化反応の実現を目的とした。 本年度は、BaFeO3-δ触媒を用いてアルケンを基質とした新たな酸化反応の開発を試みた。その結果、芳香族アルケンであるスチレンを基質として用いると、酸化的切断反応が進行し、生成物として主にベンズアルデヒド、スチレンオキシド、安息香酸が得られることが明らかとなった。本反応では4価の鉄を含むBaFeO3-δを触媒として用いたとき最も活性が高く、3価の鉄を含むペロブスカイト型酸化物や単純酸化物は低活性を示した。また、コバルト、ルテニウム、銅、マンガン、ニッケルなどを含むペロブスカイト型酸化物や単純酸化物は、ほとんど活性を示さなかった。また、触媒系は様々な芳香族アルケンの酸化的切断反応に適用可能であった。本触媒系はラージスケール反応にも適用可能であり、1,1-ジフェニルエチレンを用いたラージスケール反応では生成物であるベンゾフェノンが高収率で得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、アルケンのC=C結合切断反応が、高原子価鉄を含むペロブスカイト触媒を用いると他の鉄系酸化物と比較して効率的に反応を促進することを見いだした。また、様々な基質への適用性の確認や、ラージスケールでの反応と生成物の単離合成・反応機構についての詳細な検討を行い、本触媒を用いた新たな反応系を見出すことができたことから、順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、BaFeO3-δ触媒の高機能化のために、触媒の高表面積化による活性サイト数の向上を試みる。具体的には、微粒子化、ポーラス化、高分散担持など様々な手法を駆使してさらなる酸化反応活性の向上を狙う。また、合成した触媒を用いてアルケンのエポキシ化やヘテロ原子の酸化等の高難度酸化反応系の実現を目指す。アルカンの酸化反応に加え、エポキシド合成やアミンN-オキシドの酸化などをターゲットに、分子状酸素による酸化反応を検討する。種々の分光測定や同位体を用いた反応を行うことで、反応機構の解明を行う。また、「基質―活性金属種―活性点構造―活性中間体」の相関関係を体系化し、触媒合成にフィードバックすることで更なる高活性な触媒、反応系の開発を行う。
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