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2020 年度 実績報告書

清原家の経学における『五経正義』の受容ー東アジアの儒学教育をめぐってー

研究課題

研究課題/領域番号 20J11609
研究機関京都大学

研究代表者

王孫 涵之  京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2020-04-24 – 2022-03-31
キーワード清原家 / 教育 / 五経 / 義疏 / 儒学 / 東アジア / 教育
研究実績の概要

本研究は唐の孔穎達『五経正義』を取り上げ、それが平安時代より明経博士を世襲する日本の清原家においてどのように受容されたかを考察することを通じて、東アジアにおける儒学教育の一側面を究明することを目的とするものである。
本年度は、清原家の『五経』伝本の調査を行い、そこに記された『五経正義』に関する書き入れを収集・分析した。そのうち、「正○」のように『正義』などの義疏の巻数を示す記号を中心として研究をした。その結果、『五経』のみならず、清家の『御注孝経』『古文孝経』『老子』伝本にも同様な記号を発見した。清家の経書講義においては、選定した経注本のみならず、経注本に対応する義疏も重要な役割を果たしていたということが分かった。さらに、清家が用いた経注のみならず、『五経正義』などの義疏も概ね唐代の国定のものであることから、唐の教育制度の影響を見出した。「正○」記号は、遅くとも平安中期の最初期にすでにあったため、清家の経書講義は古来大学寮の伝統を継承したと推測できる。その成果の一部は「『礼記子本疏義』分巻考―清家『礼記』証本の義疏巻數記号を手掛かりとして―」として、『東方学』第142輯(2021年7月刊行)への掲載が決まった。
また、東アジアの儒学教育に関しては、ケイヘイ『論語正義』の編纂をめぐって北宋初期の「注疏の学」を考察した。科挙制の影響の下での、『五経正義』をはじめとする唐の国定注疏を中心とした「注疏の学」の形を究明した。加えて、『毛詩正義』(『五経正義』の一つ)によく引用される古代博物学の先駆である『毛詩草木鳥獣虫魚疏』の版本問題を明らかにした。今後はこれら二つの研究を基礎として、『五経正義』の儒学・博物学などの知識が如何に日本の儒学教育に受容されたかを考えたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現存する清原家の主要な『五経』伝本を調査し、そこに見える『五経正義』関係の書き入れを収集し分析した。清家の『五経』講義は、古来大学寮の伝統を継承し、経書解釈の基本として『五経正義』を用いたことを解明した。また、清家『五経』伝本に見られる『正義』の書き入れは、宋代以降の木版本のみならず、それ以前の古写本に由来したものもあったということを推測できた。清家の経書講義は、中国唐代からの教育制度と一致するところが多く、東アジアにおける儒学教育の共通性を見出した。

今後の研究の推進方策

次年度は、清原家の『五経』の抄物をめぐって、具体的に『正義』の内容をいかに受容したか、新たに伝来した宋学の注釈と『正義』に対して如何なる取捨を行ったかという点を検討したい。そのうえで、東アジアの儒学教育という広い視点から、清家経学の特殊性とその意義を論じたい。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 『礼記子本疏義』分巻考―清家『礼記』証本の義疏巻数記号を手掛かりとして―2021

    • 著者名/発表者名
      王孫 涵之
    • 雑誌名

      東方学

      巻: 142 ページ: 未定

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 北宋初期における「注疏の学」―ケイヘイ『論語正義』の編纂をめぐって―2020

    • 著者名/発表者名
      王孫 涵之
    • 雑誌名

      日本中国学会報

      巻: 72 ページ: 32-45

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 今本『毛詩草木鳥獸蟲魚疏』辨偽2020

    • 著者名/発表者名
      王孫 涵之
    • 雑誌名

      文史

      巻: 131 ページ: 105-124

    • DOI

      10.19325/j.cnki.11-1678/k.2020.02.005

    • 査読あり
  • [学会発表] 清原家経学における義疏学の受容―清家証本の記号について―2020

    • 著者名/発表者名
      王孫 涵之
    • 学会等名
      第七十二回日本中国学会大会

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公開日: 2021-12-27  

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