研究課題/領域番号 |
20J11654
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上田 拓 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 地震活動 / 季節変動 / GNSS / 積雪荷重 / HIST-ETASモデル / 背景地震活動度 |
研究実績の概要 |
地震活動の季節変動性のメカニズム解明へ向けて、原因の1つとして考えられている積雪荷重による応力変化をGNSSの変位データから推定した。まず、水平成分の変位データから季節変動成分を抽出した。次に、地表面における水平歪速度の季節変動を推定し、平面応力状態を仮定することで地震発生層における応力変化を推定した。推定された応力変化と東北地方の積雪地域における地震活動の発生時期との比較を行った結果、積雪荷重に対応した応力変化とそれに対応して春に増加する地震活動が明らかになった。この研究結果について国内学会で発表を行った。 上記の応力推定手法は、水平歪のみから応力を推定しているので、荷重による上下方向の応力変化を適切に推定できていない。この問題点を解決するため、GNSSの上下方向の変位データから積雪荷重の空間分布の推定を行った。変位データの季節変動成分を抽出し、荷重の空間分布を推定した。積雪量の多い、脊梁地域や日本海側の領域で大きな荷重の空間分布が得られた。現在は、得られた荷重分布から地震発生層における応力変化を計算することを行なっている。 また、2019年6月18日に山形県沖地震が発生したことを受けて、震源域とその周辺の地震活動に対して、HIST-ETASモデルを適用し、背景地震活動度や余震活動度の空間分布の推定を行った。背景地震活動度は、東西圧縮の歪速度が大きいところで高い値を示すことが明らかとなった。また山形県沖地震震源域では、隣接した領域と比べ、余震活動度が高く、地震波速度が遅い領域であることがわかり、岩石変形のマクロな振る舞いが地震活動に影響を与えることを示唆する結果を得た。これらの研究結果について、複数の国際学会で発表を行い、査読付き国際誌のEarth, Planets and Space(EPS)に論文として取りまとめて出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はGNSSデータを用いて積雪荷重による応力変化の推定手法の開発を進めた。変位データの水平動成分を用いて地震発生層での応力変化を推定し、東北日本の積雪地域での地震活動の発生時期との比較を行った結果、積雪荷重に対応した応力変化とそれに対応して春に増加する地震活動を示し、国内学会で発表した。 その後もより適切に応力変化を推定するために開発を進めた。変位データの上下動成分を用いて荷重の空間分布を推定した。積雪量の多い領域で大きな荷重の分布が得られた。得られた荷重分布から地震発生層での応力変化を計算することを行なっている。 また、2019年6月18日に発生した山形県沖地震について、震源域とその周辺の地震活動について解析を行い、背景地震活動度と東西圧縮の歪速度との相関関係や余震活動度と地震波速度との関係から、岩石変形のマクロな振る舞いが地震活動に影響を示唆する結果を得た。この研究成果については複数の国際学会で発表を行い、査読付き国際誌であるEarth, Planets and Space (EPS)に投稿し、査読を受け、出版することができた。 このように特別研究員として採用された以後、地震活動の季節変動性の解明に向けて、荷重による応力変化を推定することを進めており、論文が1本受理され、複数の学会で発表できる成果を上げるなど、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、GNSS変位データの上下動成分を用いて推定した表層荷重の空間分布から地震発生層における応力テンソルの計算を進めている。その後、実際に発生した地震のメカニズム解に対するせん断応力と法線応力を計算し、応力変化の大きさに対して地震活動度がどのように変化するか調べ、2つの関係を明らかにする。地震活動は地域ごとにHIST-ETASモデル(e.g., Ogata, 2004)を用いてフィッティングを行い、各地震における背景地震活動度である確率を評価する。メカニズム解は気象庁またはUchide (2020)によって推定された初動解を使用する。メカニズム解や地域によって応力変化と背景地震活動度の関係性がどのように変化するか見出す。得られた結果に基づいて季節変動性を取り入れた新たな地震活動モデルを提案する。
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