研究課題/領域番号 |
20J11690
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田 甜 九州大学, 歯学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 上皮-間葉相互作用 / 形態形成 / CAGE法 / 器官培養法 / 遺伝子スクリーニング / ドラッグスクリーニング |
研究実績の概要 |
我々の研究グループはこれまで、上皮-間葉相互作用における器官形態形成機構の解明を主な目的とし、歯をモデルとした形態形成マスター因子の同定を行ってきた。本年度は主に、網羅的遺伝子検索および新たな遺伝子スクリーニング法の開発を行った。さらに器官培養法を応用したドラッグスクリーニング手法の確立を行った。 1. CAGE法を用いた網羅的遺伝子解析:上皮-間葉相互作用により形成される器官に共通して発現する因子を同定するため、発生初期の上皮陥入が起こる時期に着目し、CAGE法を用いて遺伝子発現解析を行ったところ、それぞれの器官に特異的な遺伝子群および器官に共通に発現する遺伝子群の同定に成功した。 2. 器官培養法を用いたex vivoスクリーニング法の開発:上記スクリーニングにて同定した遺伝子が形態形成に重要であるか否かを確認するため、マウス胎仔歯胚をモデルとした上皮-間葉相互作用スクリーニング法の開発を行った。in vitro/in vivo遺伝子導入装置 (NEPA GENE)を用いて上皮と間葉に分離した歯胚にGFPの遺伝子導入を行い、再度結合させ器官培養を行った。蛍光顕微鏡にて上皮および間葉それぞれにおいて蛍光発色確認したため、遺伝子導入が成功していることを確認した。 3. 器官培養法のドラッグスクリーニングへの応用:マウス歯胚を取り出し、様々な抗がん剤を添加し、歯胚形成をリアルタイムに観察したところ、ヒトに抗がん剤を投与したときと同様の、歯胚形成不全、エナメル質形成不全などの影響を観察できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上皮-間葉相互作用は、我々の体を構成する様々な器官の発生に重要な機構であり、歯、唾液腺、毛、肺および腎臓などの形態形成に重要な役割を果たしていることが示唆されているが、これら器官の共通の制御機構については不明である。本年度の研究で、これら器官に共通に発現する因子を、トランスクリプトーム解析を用いて網羅的に解析し、上皮-間葉相互作用を引き起こす候補遺伝子の同定に成功した。さらに、マウス歯胚器官培養法を応用することで、同遺伝子群が上皮-間葉相互作用をにおいて重要であるか確認するための検出システムを構築した。これまでは主に、培養細胞等を用いたスクリーニング法が行われていたが、培養細胞を用いた2次元培養モデルでは器官の形態といった3次元的な制御機構を再現できず、上皮-間葉相互作用の主体である形態形成の評価は困難であった。今回私が開発した歯をモデルとした上皮-間葉相互作用検出システムはこの欠点を克服し、今後の遺伝子スクリーニングを飛躍的に効率化でき、期待以上の成果であると評価することができる。また、発生期における抗がん剤の副作用を、器官培養法を用いることで再現することに成功した。本モデルを用いることで、抗がん剤副作用の回避方法をスクリーニングすることが可能となり、新たなドラッグスクリーニング法の開発へと応用できる可能性が示された。
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今後の研究の推進方策 |
1. 器官培養法を用いたex vivoスクリーニング法の開発 これまでの研究で、上皮-間葉相互作用による形態形成に関わると予測される遺伝子群の同定に成功した。そこで、これら遺伝子が形態形成に重要であるか否かを確認するため、マウス胎仔歯胚をモデルとした上皮-間葉相互作用スクリーニング法の開発を行う。具体的には、胎生13日齢マウス歯胚を実体顕微鏡下にて摘出し、コラゲナーゼ・ディスパーゼを用いて上皮と間葉を分離後、in vitro/in vivo遺伝子導入装置 (NEPA GENE)を用いてGFPの遺伝子導入を行い、その後、上皮と間葉を結合させ器官培養を行う。培養2日後のGFPによる蛍光発色を確認することで、遺伝子導入の可否を判断する。 2. ex vivoスクリーニング法を用いた遺伝子スクリーニング 候補遺伝子のsiRNAを歯胚に遺伝子導入し、器官培養法を用いて培養することで、候補遺伝子のスクリーニングを行う。さらに得られた候補遺伝子の機能解析を行うことで、上皮-間葉相互作用に重要な因子の同定を図る。
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