研究実績の概要 |
昨年度は研究課題であるローレンツ時空における共形ブロックの重力双対解明に向けて研究を進めた。具体的には西岡(京大基研)とH-Y. Chen, L-C. Chen (National Taiwan University) とともに以前示したOPEブロックの重力双対の拡張を行った。OPEブロックは共形場理論における基本的な性質である演算子積展開(OPE)を各既約表現に分解したものである。このOPEブロックを組み合わせることで共形ブロックを構成することが出来るためより基本的な量とみなすことができる。 申請者は西岡(京大基研)と奥山(東大)とともに、このOPEブロックをローレンツ時空領域、特にRegge極限と呼ばれる領域を考えることで先行研究において得られていた共形ブロックの振る舞いをOPEブロックから再現できることを確かめた。Regge極限においては時空の大域的な構造を反映したEuclidean計量では見えない振る舞いを共形ブロックが示すことが知られている。我々はこの振る舞いを共形ブロックではなくより基本的な構成物であるOPEブロックから示し、さらにRegge極限におけるOPEブロックの重力双対について解釈を与えた。この研究によりホログラフィー原理の記述に新たな視点を与えることができた。
昨年度は研究課題と関連して境界付き共形場理論に関する研究も行った。具体的には3次元境界付き時空において6次のポテンシャルを持つO(N)模型をlarge N極限で調べた。この模型は臨界現象の理解のためにも、また境界がある場合におけるAdS/CFTの理解のためにも重要なものである。我々はこの模型の様々な物理量を計算し、large N極限における相構造と共形アノマリーを明らかにした。
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