研究実績の概要 |
ウシ胚は、着床前特異的にインターフェロン・タウ(IFNT)と呼ばれるタンパク質を分泌する。これまでに、IFNTは母体の子宮内膜に作用して、妊娠の維持に必須の役割を持つこと、ISG15に代表されるインターフェロン(IFN)誘導性遺伝子(ISGs)の発現を誘導することが知られている。一方で申請者は、昨年度の本研究課題の成果として、着床前子宮頸部組織にもIFNTが存在すること、子宮頸部組織はIFNTに対して応答性を示すことを明らかにした。しかし、子宮頸部組織におけるIFNTの作用機序については明らかになっていない。そこで、令和3年度の研究計画を以下のように設定した。 1. 非妊娠および妊娠ウシ子宮頸部組織におけるI型IFNシグナル活性化状態の解析 非妊娠または妊娠18日目に採取した子宮頸部粘膜組織において、I型IFNシグナルの活性化状態を反映するリン酸化STAT1の発現、ならびにISG15のタンパク質発現を解析したところ、非妊娠ウシと比較して妊娠ウシで顕著に明瞭なバンドが得られた。また、I型IFNシグナル関連因子は、いずれも遺伝子発現レベルにおいて非妊娠ウシと比較して妊娠ウシで顕著に発現が増加していた。 2. 妊娠ウシ子宮頸部組織における継時的なI型IFNシグナル活性化動態の解析 妊娠14, 18,および25日目ウシ子宮頸部粘膜組織において、リン酸化STAT1およびISG15のタンパク質発現を解析した結果、いずれも妊娠18日目で顕著に明瞭なバンドが認められた。遺伝子発現レベルにおいても、I型IFNシグナル関連因子はいずれも妊娠18日目をピークとする継時的な発現動態がみとめられた。以上から、子宮頸部組織に移行したIFNTは、I型IFNシグナルを活性化することで、ISG15のような種々のISGs発現を誘導すると考えられた。
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