研究課題/領域番号 |
20J11803
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
草野 善晴 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | ゲノム不安定性 / DNA複製 / 染色体分裂 / SMC5/6 / 染色体構造異常 |
研究実績の概要 |
悪性腫瘍細胞の基盤的異常として知られるゲノム不安定性は悪性腫瘍細胞の増殖や進化に影響を及ぼすゲノム異常を引き起こす。染色体構造維持に重要であるSMC5/6複合体の機能欠失は染色体分裂時に高頻度に分裂異常が生じることで染色体の転座や異数体などのダイナミックな染色体構造異常を引き起こすことが知られるが、SMC5/6が制御するゲノム構造は何かが未だ明らかとされていない。この解明を目的として、SMC5/6による制御機構がはたらく細胞周期を特定することと、SMC5/6機能欠失によってその細胞周期はどのような異常を呈してどのようなゲノム構造が蓄積しているのかについて細胞生物学的及びゲノム学的手法を用いて解析を行う。令和2年度は実験系の確立と併行して行った実験によって以下の成果が得られた。1) CRISPR/Cas9を用いて内在性SMC6の標識と迅速なノックダウンを可能にするAuxin-inducible degronシステムを細胞に導入することによって細胞周期を通じた内在性SMC5/6の詳細な細胞内局在を明らかとし、SMC5/6が間期からゲノム上でその役割を担っていることが推察された。2) S期中のSMC5/6機能欠失が染色体分裂時に高頻度に染色体ブリッジの出現に必要であることを明らかとした。3) SMC5/6はS期にクロマチンとの結合量が増加し、結合動態が安定化することを明らかとした。4) SMC5/6欠失によるS期制御異常はDNA複製を遅延させ、分裂期まで残った未複製クロマチンが染色体分裂異常の原因の一つであることを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究結果から、SMC5/6がS期にクロマチンと結合し、DNA複製進行に重要であることから複製の進行に関連して生じるゲノム構造を制御していることが示唆された。今後、この点について研究するとともに、どのような機序で構造を制御しているのかについても解析を行う。
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今後の研究の推進方策 |
超らせんDNA構造は複製フォークが進行した際に生じることが避けられないゲノム構造であり、解消されない場合には複製遅延を引き起こすことが知られている。超らせんDNA構造がSMC5/6の機能欠失で蓄積するかについて解析するための実験系の確立を目指す。また、超らせんDNA構造の解除に関わることで知られるトポイソメラーゼにSMC5/6欠失がどのような影響を及ぼすのかについて解析を進める。
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