昨年度までの細胞生物学的実験を通して、本年度は、SMC5/6はDNA複製期にクロマチンに結合すること、複製開始前に迅速にSMC5/6を分解した場合には複製は遅延し染色体ブリッジを細胞分裂時に呈し、さらには多数の微小核形成を引き起こすことから、SMC5/6喪失は複製期の異常を解消できないまま染色体分裂を迎えた結果、分裂異常を通して悪性腫瘍などでみられる様々な染色体構造異常をもたらす原因となることを明らかとした。実際に核型を調べると染色体の構造と数において多様な核型異常が出現することが明らかとなった。複製中のSMC5/6喪失がいかに分裂期の染色体ブリッジを出現させるのかを調べるために、SMC5/6を分解した場合の複製の遅延パターンを詳しくみると、トポイソメラーゼ(TOP2A)機能喪失による複製遅延とパターンが酷似していたことから、SMC5/6はTOP2Aと協調して機能している可能性が示唆された。さらに、SMC5/6喪失状態での複製進行によって、TOP2Aの機能喪失によっても生じる超らせんDNA構造と、姉妹染色体どうしの絡まりが蓄積することが実験によって示唆された。特に負の超らせんDNA構造の蓄積が見られることから、SMC5/6はTOP2Aと協調して複製フォークの回転を制御しフォーク後方に生じる負の超らせんDNAと姉妹染色体の絡まりを制御することによってゲノム構造の安定化に寄与することが示唆された。
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