本研究課題は、両親媒性の有機-無機ハイブリッド高分子ナノシートを前駆体として形成される多孔質SiO2超薄膜のナノ構造(膜厚・膜密度・細孔サイズ)および表面化学特性の同時制御により、高感度・高選択性を有する分子認識電極界面の開発を目的としている。本年度は、前年度に作製したかご型シルセスキオキサン高分子ナノシートを前駆体として得られるナノ多孔質SiO2超薄膜の表面機能化およびその選択的イオン透過性の評価を試みた。表面機能化には、pH応答性のシランカップリング材として知られる3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を用いた。その結果、溶液濃度を最適化することで、ナノ多孔質SiO2超薄膜表面をアミノ基で均一に修飾することに成功した。また、表面ゼータ電位測定の結果から、得らえた表面修飾ナノ多孔質SiO2(NP SiO2-NH2)超薄膜がpH応答性を有することが示された。さらに、得られたNP SiO2-NH2超薄膜を金電極表面上に製膜し、異なる電荷を有する酸化還元種(Fe(CN)63-/4-およびRu(NH3)62+/3+)を用いてイオン透過性の評価を行った。その結果、低pH条件下(NP SiO2-NH2超薄膜の等電点以下)においてアニオン選択的なイオン透過性を示すことが分かった。以上の結果から、かご型シルセスキオキサンを有する高分子ナノシートを前駆体とすることで、ナノ多孔質超薄膜の構築に成功し、さらにその表面機能化を行うことで、サイズおよび電荷選択的な電極界面を作製することに成功した。現在、タンパク質などの生体分子(酸化還元活性を有するフェリチンなど)についても検討を行っており、今後の電気化学ベースのセンサ材料や分離膜材料開発にむけた選択層としての利用などが期待される。
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