研究課題
あらせ衛星によって取得されたlower band chorus (LBC)、upper band chorus (UBC)、electron cyclotron harmonic (ECH) 波の振幅を横軸、電離圏に降下する電子フラックスの割合 (LCFR)を縦軸として粒子計測器の観測エネルギー毎に散布図を作成した。そして、LCFR をそれぞれの波動の振幅の関数として回帰直線を求めた。また、LCFR と波動強度の間の Kendall の順位相関係数を求めた。その結果、LBC、UBC、ECH波の回帰直線の傾きが正であり、かつ相関係数が統計的に有意な値を持つエネルギーは、それぞれ~2-20 keV、~1-9 keV、~0.1-2 keV であることが明らかとなった。この結果から、それぞれの波動が電子を電離圏に降下させオーロラ発光などを引き起こすエネルギー帯が明らかとなった。また、LBC、UBC、ECH波によるピッチ角散乱の発生割合が高いエネルギー帯は、回帰直線の傾きと相関係数の解析結果とおよそ一致していることが確認された。さらに、先行研究でピッチ角散乱への寄与が小さいと報告されていたECH波についても、0.1 keV 付近でピッチ角散乱の発生率が高くなっていることが明らかとなった。その他に、地上カメラと欧州非干渉散乱レーダーによる同時観測データを統計解析することによって、LBC波が引き起こすと考えられている脈動オーロラ発光中に、UBCやECH波による低エネルギー電子降下が引き起こす電離圏高高度(F領域)での電子密度増加現象が頻繁に発生していることを示した。
1: 当初の計画以上に進展している
当初予定していた通りの研究計画を進められており、1本の査読付き論文が採録され、2本の論文を投稿準備中である。
今後は、準備中の2本の論文を査読付き国際学術雑誌に投稿する。また、オーロラトモグラフィ解析手法を用いて、多点オーロラ画像からオーロラ発光強度の3次元分布と降下電子の2次元分布の再構成に取り組む。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Geophysical Research Letters
巻: 47 ページ: -
10.1029/2020GL089926