研究課題/領域番号 |
20J11840
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
柳沢 直也 東京都立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 泡沫 / 気泡 / 構造緩和 / ジャミング / 泡 / ジャミング転移 / ガラス |
研究実績の概要 |
液体中に気泡(バブル)が詰まった状態にあるものを泡沫(フォーム)という。泡沫は液体と気体から構成されているにも関わらず、3次元的な構造を保つといった固体的なユニークな性質をもっており、生クリームやメレンゲ、ビールの泡といった食料品、洗剤やハンドソープ、シェービングクリームといった日用品や化粧品など、様々な分野で応用されている重要なものである。しかしながら、その構造の複雑故に、泡沫が関わる現象には未解明な部分が多く存在している。泡沫の幾何学的構造といった静的性質はよく調べられているが、動的特性についての理解は乏しいのが現状である。その理由は、液体量、界面活性剤の種類、気泡の大きさ、気泡の大きさのばらつき、粘性など多くの要素が関わっているためである。この泡沫に力を加えたときの内部の構造変化といった動的特性を明らかにすることは、伸びたり凹んだりなどの力学応答に関わっているため、重要なことである。 そこで本研究では、観察しやすい2次元泡沫に力の代わりに水を加えて変化を促すという新しい手法を用いて、構造緩和の仕方について詳しく調べ、解明することを目的とした。 その結果、気泡の大きさのばらつきによって構造緩和の仕方が異なることがわかった。気泡のサイズが揃っているときは、協同的に気泡の動きが揃っている、もしくは、反対になっていること(スリップ緩和)がわかり、一方、気泡のサイズがバラバラのときは、気泡の動きはランダムになっている様子(ランダム緩和)が観察された。またこの構造緩和の仕方の違いは、接触している気泡数よりも近距離の構造の方が重要であることもわかった。 この研究成果(緩和過程)はジャミングと呼ばれるガラスの分野にも深く関わっているため、泡沫の応用を広げるだけでなくガラス分野の研究発展にもつながる重要な発見であるといえる。本研究はScientific Reportsに論文として出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コロナ禍ではあったが、期待以上に研究は進展した。本研究課題は国際学術誌Scientific Reportsに論文を1報出版し、国内・国外で学会発表を行うなど、高い成果を上げることができた。年次計画書の1年目通り、今年度はウェット泡沫の外的因子に対する応答についての研究を行った。泡沫に液体を注入したときの緩和過程を実験的に観察し、画像解析を用いて定量的解析を行うことで、ウェット泡沫の構造緩和の特性を明らかにした。さらにソフトパーティクルモデルを用いて、この緩和実験に対応させた数値シミュレーションも行い、緩和現象の一般性も確かめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、泡沫に気体(空気)を注入・吸引したときの応答について調べる。空気注入・吸引によって発生する圧力によって、周囲の気泡が変形し、力が伝播する。ドライな泡沫では、歪みが大きい気泡が鎖状に連なっており、粉体のforce chain と呼ばれる力のネットワークと似たようなふるまいを示すと申請者は予想している。そこで今後画像解析から、気泡の歪みの大きさの空間分布を求める。注入・吸引過程における気泡の歪みを時々刻々調べることで、泡沫内の力の伝播の仕方とその時間変化を明らかにする。また不安定な状態にある気泡は再配置を起こすことによって安定な状態に緩和する。そこで、気泡のトラッキングも同時に行うことで、再配置と力の関係も明らかにする。また弾性的なドライ状態と粘性的なウェット状態では力の伝播が異なると考えられるため、力学特性の液体分率依存性も明らかにする。
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