研究課題/領域番号 |
20J11845
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
林 希奈 琉球大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 多種共存のメカニズムの解明 / 群集構造 / 宿主イソギンチャク / クマノミ類 / 魚類相 |
研究実績の概要 |
最初に、本研究はクマノミ類との相互作用によって創出される宿主イソギンチャク共生系の解明を目的とする。そのために、本年度は以下の調査を実施した。2020年7月から10月にかけて、琉球列島で複数の観察区を設置し、クマノミ類と宿主イソギンチャクの生息状況を調査した。その際に、宿主イソギンチャクに生息していたクマノミ類の個体数、種数、宿主イソギンチャクに生息する他種魚類の生息の有無についても記録した。これらのデータを基に、宿主イソギンチャクを利用する他種魚類の生息の有無に最も影響を与える要因は何かロジスティック解析を行った。その結果、その他の魚類の生息の有無に最も影響を与える要因は、宿主イソギンチャクもサイズであることが解明された。 さらに、宿主イソギンチャクを利用する魚類相とサンゴを利用する魚類相がことなるかどうか調べるために、観察区内に生息している造礁サンゴについて、種類、サイズ、生息している魚類の個体数と種数を記録した。その結果サンゴに生息していることが多かった、ミスジリュウキュウスズメダイやチョウチョウウオ類は、イソギンチャクにはいないことがわかり、サンゴと宿主イソギンチャクでは、生息する魚類相が異なることが明らかになった。 また、2020年6月に沖縄本島、2020年9月と2021年3月に西表島の浅場に生息する宿主イソギンチャクとクマノミ類の群集構造や個体群動態についての調査を行った。この調査は今後も引き続き行っていく予定である。 なお、これまでの研究について国際誌に2本の論文が受理された。そして、これまでに国際誌に発表した6本の論文の成果を取りまとめ、2021年2月に博士論文を提出し、2021年3月23日に博士課程を短縮修了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は、新型コロナウィルスの蔓延により、当初予定していた野外調査を行うことが難しくなった。それにもかかわらず、沖縄本島や西表島で宿主イソギンチャクとサンゴに生息する魚類の種類の調査を行い、サンゴと宿主イソギンチャクとでは生息する魚類相が異なることを明らかにした。現在、この結果については国際誌に論文を投稿する準備を進めているところである。さらに、宿主イソギンチャク類の周りに生息する魚類の種多様性や生物群集の構造については去年に続き大きな進展があり、国際誌に原著論文2つが受理された。 令和2年~3年に行った研究とこれまで行った研究をまとめ博士論文を作成する中で、興味深い知見を得ることができた。また、令和3年3月23日に、博士の学位を取得し、博士課程を短縮修了することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年4月から10月に奄美群島でクマノミ類と宿主イソギンチャク類の群集調査を行う。1つの島につき10か所以上の観察区 (100 m×100 m)を設置し、観察区内におけるイソギンチャク類について以下の項目を記録する; 宿主イソギンチャク類の種数・個体数・面積・生息水深、クマノミ類の種数・個体数・成魚ペアの有無・未成魚数、他種魚類(主にミツボシクロスズメダイ)の有無・個体数。また、宿主イソギンチャク類周辺に近づく生物や、それに対するクマノミ類の反応などを定量評価するために、沖縄島西海岸数か所のクマノミ類のコロニーにカメラを月に一度設置し、録画を行う。撮影機材は2つ設置し、タイムラプス撮影 (24時間)と動画撮影 (日中4時間)を行う。西表島の浅場の宿主イソギンチャクとクマノミ類の群集構造については、前年度に引き続き調査を行う、また、研究成果の一部を日本魚類学会・日本生態学会・日本サンゴ礁学会の年次大会で発表する。
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