教員養成課程の学生の中には,将来の進路が想定された課程にいるにも関わらず,生き方を十分に探索できていないまま教員に就き,就職直後に職場不適応に陥る者がいる。 本申請課題の目的は,学生が,教師を目指す際の進路上の悩みを解決させた上で,将来の職場適応に繋がる,アイデンティティ(教師として生きるという自覚)をどのように発達させているのかを検討することであった。 令和3年度の研究成果は主に3つである。第1に,教員養成課程の学生が,自身の進路や資質・能力を再考しながら,多様なアイデンティティを発達させていることを明らかにした実証研究論文が,学術的に評価され,日本青年心理学会の第10回学会賞に選出された。第2に,教育実習期間において,教員養成課程の学生は,自身のアイデンティティを,教師としての資質・能力を省察するなかで進展的に発達させていることを明らかにした実証研究論文が,国際査読付き雑誌『Identity』に掲載された。第3に,教育実習での様々な体験を自己にとって肯定的に意味づけたと語った学生が,教育実習期間でアイデンティティを進展的に発達させていることを明らかにした研究を,中国四国心理学会で発表した。そして,研究発表内容が学術的に評価され,中国四国心理学会第77回大会優秀発表賞に選出された。 以上の3つの成果は,教員養成課程という文脈における学生の生き方の形成過程に関してアイデンティティ発達の観点から新しい知見を加え,学術的・実践的に意義のある示唆を提供するものである。
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