本研究課題に関連して、昨年度の研究成果をAstrophysical Journalに投稿した(現在、受理され、出版準備中)。この論文は、すばる望遠鏡の狭帯域フィルターで観測された約3千個の星形成銀河の撮像データを解析することで、赤方偏移2.2から6.6までの星形成銀河を取り巻く水素ガスの分布を明らかにしたものである。今回検出を目指した水素ガスは表面輝度が約10^-20 erg s^-1 cm^-2 arcsec^-2と非常に暗いため、結果の信頼性を示すには測定の手法や統計的な取り扱いが適正であることを明確にする必要がある。論文審査員との議論を経て、手法の妥当性や解釈などについて理解を深めることができた。この研究の成果は、赤方偏移2.2から6.6という幅広い期間全体を統一した手法で解析し、ガスの分布やその物理起源を求めたという点で貴重なものである。この研究の成果は国内学会においでも発表した。 上記に加え、発展課題にも取り組んだ。本研究課題の対象たる遠方銀河は、質量の小さなもの(低質量銀河)がその大半を占める。したがって低質量銀河の性質や進化を調べることは、遠方銀河の理解において非常に重要である。そこで、紫外から可視の超広域サーベイの大規模観測データを統計的に処理することで、低質量銀河の質量分布とその進化を明らかにした。またこの結果を上記のガス等の結果と併せて議論することで、遠方銀河の性質を包括的に議論した。この研究の成果は博士論文としてまとめ、受理された。
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