令和3年度の研究業績の内容は大きく、追加調査の実施とアウトプット作業(講演、執筆)である。以下、それぞれについて具体的に記述する。 前者については、昨年度同様、新型コロナ感染拡大の影響を受け、対面で実施することはできなかった。そのため調査は、ビデオ通話(Zoom)、電話、各種SNSを通じた文章でのやりとり(FacebookのMessenger、LINE、Eメール)などを積極的に利用して実施した。質的な調査の場合、非対面/非積極な方法を利用することは、ディスコミュニケーションが生じやすいなどの理由で、調査のクオリティ低下につながることも考えられる。しかし、本調査対象である髪のない女性たちの多くは、髪がないことに対する差別や偏見ゆえに、他者/社会との「つながりづらさ」を「障害」として経験していた人びとであった。であるがゆえに、非対面/非積極な方法で実施された調査を通して得られた彼女たちの「声」と、そこでなされた調査者と被調査者の相互行為は、対面で実施される調査と同様、あるいはそれ以上に、密で、質の高いものであった。限られた状況だからこそ、調査協力者と種々のツールを通じてやりとりを重ねることで、ラポールを深化させながら、丁寧に聞き取りを行うことができたことは、大きな成果である。
|