天の川銀河の近傍銀河である大マゼラン雲では、小マゼラン雲からの流入ガスと大マゼラン雲のガスが衝突したことにより大規模な星形成が誘発されたと示唆されている。このような銀河間相互作用による星形成は、宇宙初期に頻繁に起きていたと理論的に予測されており、詳しいメカニズムを調べることが重要である。しかし、これまでの研究では詳しいガス衝突の描像までは観測的には調べられていなかった。そこで本研究では、星のダストによる減光を用いることで、ダストとガスの3次元構造を調べる新しい手法を開発し、この手法を大マゼラン雲の星形成領域に適用した。 その結果、大規模な星形成領域においてガス衝突を示唆する3次元構造が得られた。さらに、そのガス衝突のタイミングは星形成領域ごとに異なっていることを発見し、このタイミングの違いが、各星形成領域の進化段階の違いを生んでいることを明らかにした。加えて、星形成領域ごとにガス量に対するダスト量の割合が異なることも発見し、衝突するガスの起源が異なることが分かった。以上の結果から、銀河間相互作用による大マゼラン雲と小マゼラン雲のガス衝突や、大マゼラン雲の銀河腕からのガス流入によるガス衝突といった、様々な起源による誘発的星形成が大マゼラン雲の全面で起きていることを提案した。 これらの結果は、査読付き論文であるPASJ誌 (Publications of the Astronomical Society of Japan) で掲載されることが決定した。
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