本年度は化学現象を記述するSchnakenbergモデル(SCモデル)を中心とした数理モデルにおいて、領域の形状と環境効果を表した空間非一様な係数によるパターンの形状と安定性への影響に関する数学解析を行った。
(1) 複数の線分を繋ぎ合わせた領域であるメトリックグラフ上でSCモデルのピーク解(ピークを持つ定常パターン)の解析を行い、一般のグラフに対する解の存在と安定性に関する一般論の構築に成功した。その中で、ピークの位置と安定性がグリーン関数で表現されたグラフの幾何と空間非一様な係数との相互作用によって決まるメカニズムを詳細に解明することができた。解の存在に関する研究結果については、倉田和浩教授(東京都立大学)との共同研究として国際学術雑誌に掲載された。安定性に関する研究結果については、単著論文として国際学術雑誌へ投稿中である。
(2) 活性因子と抑制因子による生命現象を記述したGierer-Meinhardtモデルについて、SCモデルの解析で確立した手法を用いて、典型的なグラフであるY字グラフ上でピーク解の存在に関する解析を行った。更に、本研究では空間非一様な係数について、より一般の設定を課すことで、環境効果によるパターンへの影響に関するより詳細な解析を行った。その中で、ピークの位置がグリーン関数と活性因子の方程式に対する空間非一様な係数による影響だけで決まるメカニズム及びSCモデルの結果との違いを詳細に解明した。この研究結果については、単著論文として国際学術雑誌に掲載された。
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