刺激応答型光感受性分子は、標的組織に過剰発現するバイオマーカーに応答して、光感受性の発現がOFFからONに変化する化合物である。非標的組織では光感受性がOFFのままであり、光照射下でも毒性を発現しないため、光線力学療法における光過敏症の副作用を低減することが期待できる。このような背景の中、前年度までに光感受性分子である天然物ヒポクレリンBと、がん細胞に過剰発現するバイオマーカーである過酸化水素に応答する芳香族ボロン酸を連結した新規刺激応答型光感受性分子1をデザイン、合成した。さらに、660 nmの光照射下における1の光感受性がOFFであること、1が過酸化水素と反応して、ヒポクレリンBを放出し光感受性を回復すること、および1が過酸化水素を過剰発現するがん細胞に対して選択的な光細胞毒性を発現することを見出している。そこで本年度は、(1) 1の光感受性および過酸化水素応答性に関する更なる機能評価と、(2)マウスを用いたin vivoにおける機能評価を目的として研究を行った。 (1)スピントラッピングEPR法を用いて、660 nmの光照射下における1の一重項酸素生成能を評価した。その結果、1を用いた場合は、ヒポクレリンBを用いた場合と比較して、一重項酸素の検出が顕著に減少したことから、1の光感受性がOFFであることを本手法でも明らかにした。次に、生体に関連する各種活性酸素種に対する1の応答性を評価した。その結果、1が過酸化水素に対して選択的に応答して、ヒポクレリンBを放出することを見出した。 (2)ヒポクレリンBと芳香族ボロン酸とを連結した新規刺激応答型光感受性分子のマウスに対する機能評価を行った。現在までに、本刺激応答型光感受性分子が、マウス飼育環境下および660 nmの光照射下で、光過敏症を誘発しないことを見出している。今後、腫瘍担持マウスを用いた光抗がん活性について検討を行う。
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