研究課題/領域番号 |
20J12230
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
本橋 宏大 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | イオン伝導体 / 固体電解質 / フッ化物イオン / 固体イオニクス |
研究実績の概要 |
今年度は,構造的欠陥を導入したアニオン伝導体の開発をし,その構造とイオン伝導特性の相関を明らかにすることに取り組んだ.アニオン伝導体の開発については,フッ化物イオン伝導性を示すことを見出している含分子性カチオンフッ化物(NH4)2(Mg0.85Li0.15)F3.85とNH4(Mg0.8Li0.2)F2.8に試料の微細化,非晶質化を目的としてメカニカルミリング(MM)処理を施した.(NH4)2(Mg0.85Li0.15)F3.85は,MM処理により,NH4MgF3とMgF2への分解が確認された.一方,NH4(Mg0.8Li0.2)F2.8では,分解反応は起きず,微細化及び非晶質化が確認された.MM処理を施したNH4(Mg0.8Li0.2)F2.8の導電率は,MM処理前と比べ,100倍程度向上した.その値は,室温で10^-5 S cm-1という,近年報告されているフッ化物イオン伝導体の中では高い導電率を達成した. 構造とイオン伝導特性の相関解明については,メカニカルミリング処理を施したNH4(Mg0.8Li0.2)F2.8を対象に,放射光施設SPring-8のBL04B2にて,高輝度X線全散乱測定によるPDF解析に取り組んだ.これにより,MM処理時間毎の非晶質化度の情報を取得した.この結果から,微細化によりイオン伝導特性が向上したことが明らかになった.また,非晶質化については,イオン伝導を阻害する成分であることを示唆する結果であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の年次計画は,構造的欠陥を導入した材料の作製と,その伝導メカニズムの解明であった.これに対し,メカニカルミリング法により微細化及び非晶質化した試料の作製に成功した.この試料に対し,PDF解析などを用いた構造解析から,イオン伝導特性向上の要因を明らかにした.以上より,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに,構造的欠陥・点欠陥を導入したアニオン伝導体の開発と,MM法により作製した試料の構造とイオン伝導特性の相関関係の解明をした.前者では種々の欠陥を導入したアニオン伝導体開発により,新たな材料群の開拓に成功している.今後は,開拓した材料群を中心に元素置換などを利用してイオン伝導特性の向上を試みる. 後者では,微細化がイオン伝導特性の向上に寄与していることを明らかにしている.今後は,ビーズミルなどを用いて,より微細な試料の作製に挑戦し,更なる導電率の向上を図る.
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