研究課題/領域番号 |
20J12263
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
久保 尚敬 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | M理論 / 超対称性理論 / Chern-Simons理論 / 行列模型 / パンルヴェ方程式 |
研究実績の概要 |
本年度は、M理論と呼ばれる量子重力理論に含まれる重要な物体であるM2ブレーンの解析を行った。特に、M2ブレーン上の低エネルギー有効理論(ここでは世界体積理論と呼ぶ)を記述していると考えられている超対称チャーン・サイモンズ理論の分配関数に着目した。この分配関数は、M2ブレーンの重要な情報を保持していると期待される。特に筆者らは、これまでに、この分配関数がワイル群と呼ばれる群で記述される対称性を保持していることを発見してきた。このことを見るために重要な役割を果たしたのが、フェルミガス定式化と呼ばれる計算技法である。ただし、この技法は適用できる場合が限られていた。本年度、筆者は、この技法をより多くの世界体積理論に適用できることを示した。より多くの、というのは、そもそもM2ブレーンを置く幾何を変えることによって、同じM2ブレーンでも異なった世界体積理論で記述されることが知られている。そして、筆者の功績によって、より複雑な幾何の上に置いたM2ブレーンの分配関数に対しても、フェルミガス定式化が適用できるようになったのである。その結果として、より複雑な幾何上のM2ブレーンについても、簡単な幾何上のM2ブレーンが持つ対称性の自然な拡張と考えられる対称性が存在することを明らかにすることができた。 本研究課題の大きな目標の一つは、M2ブレーンの可積分構造を明らかにすることである。可積分構造の可積分性の背後には対称性が存在することが知られている。したがって、物理理論の対称性を明らかにすることは、その背後に隠れている可積分構造を明らかにするうえで本質的に重要な役割を果たすと期待される。その意味で、本年度の研究結果には重大な意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までに、研究計画の通り、M2ブレーンの世界体積理論の対称性を明らかにした。またその計算ツールであるフェルミガス定式化の拡張を行い、来年度以降の研究の土台を作ることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降の研究では、M理論の可積分構造の解明、およびその結果を用いたM理論の非摂動的解析を行う。
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