令和2年度の研究成果としては、第一に、独自に作成した人的連続性のデータセットを用いた計量分析において仮説の妥当性が示された。具体的には、人的連続性を左右する民主化の形態との相関を示した上で、移行の形態がクーデタや統治者の交代による権威主義体制への逆戻りや、選挙不正や大統領権限の拡大といった「民主主義の後退」に影響することを確認した。その結果は論文としてまとめており、推敲を重ねた後に国内の査読付き学術雑誌に投稿予定である。また、クーデタによる体制変動については、行為者である軍のフレーミングがその後の政治にどのような影響を与えるかを明らかにし、共著論文として海外の査読付き論文に掲載された。 第二に、因果メカニズムの実証を目的としたインドネシアの事例分析であるが、国内の研究機関及び図書施設、自身がこれまでに収集した資料から、体制変動初期である1998年の民主革命後の体制構築過程における旧与党議員の動向を分析した。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う海外渡航の制限により、インドネシア及びオーストラリアでの資料収集が実施できなかったため、当該年度内での作業完了に至らなかった。 その繰越として、令和3年度は、引き続き事例分析に取り組んだ。しかし、本年度も海外渡航が困難であったことから、国内の資料室及び現地の研究機関からの郵送によって一部の資料を入手した。その結果、インドネシアの民主化前後における人的連続性とその影響について、分析を進めることができている。
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