真理を公理化する試みは基本的に、真理の集合論的・モデル論的構成を形式化する形でなされてきた。しかしながら、Kripkeらが提案した真理の構成方法は比較的強力な集合論の原理を用いており、これを真理の(一階の)公理的理論に落とし込むことは容易ではない。実際Fischer(2015)らは、ある公理系が、意図する真理概念を適切に捉えているといえるための基準を与え、それに従えばKripke的真理概念の公理化は不完全にしかなしえないことを証明した。 そこで本年度の研究では、Kripke的な真理構成で用いられた集合論的原理を公理的真理理論において表現し、真理を公理化する試みを擁護することを目標とした。具体的には、本研究は次の2段階からなる。 ①Kripke的な真理構成で用いられる集合論的原理が強力である原因の一つの理解は、ある集合を定義する際に、その集合を含む「全ての」集合に言及している(非可述的定義)点である。本研究では、Kripke的真理概念を定式化するには、より弱い集合論的原理で十分であることを論証し、こちらは真理の公理的理論でも表現できることを示した。特に、この弱い集合論的原理に基づいた真理概念については上述のFischerらの基準も満たせることを証明した。 ②こうして定式化された公理的真理理論の証明論的強さは、既存の理論よりも若干強くなることを示した。したがって、「証明論的に強力な公理的真理理論を与える」という本研究の主要な目的の一つに照らしても適切であることがわかった。
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