本研究の最終的な目的は,持続可能社会実現に向けた高付加価値を実現する製品サービスシステム(Product-service system:PSS)の実装を実現するために,関与するステークホルダの多様性がその設計に与える影響を明らかにする多様性の綜合手法の開発である.令和3年度では以下の3項目に取り組んだ. (1)PSS の共同デザインにおける不確実性分析手法:それぞれで異なる経験,信念,知識,志向を有する多様な主体が参画するPSSデザインにおいては,各主体が認識する設計解の曖昧さ,すなわち,不確実性の相違を特定し,その低減方針の合意形成が重要である.そこで,デザインにおける概念操作を,集合論を用いて論じる一般デザイン学と,従来の研究で扱われている不確実性の概念を基に設計者間の不確実性の認識の相違を類型化した.そして,本類型を基にした不確実性の相違分析手法を構築した. (2)多目的最適化によるPSS設計解の構成手法:PSS設計解を構成するためには,(1)による不確実性の低減のみならず,各ステークホルダの多様な要求を可能な限り最大化させる必要がある.そこで,多目的最適化を活用したPSSの最適設計解の導出支援手法を構築した. (3)PSSの社会実装障壁の体系化:PSSの社会実装を実現するためには,(1)にて対象としたデザインの段階の不確実性のみならず,PSSの長期的な運用を見据えて,そのライフサイクル全体で不確実性に対処可能とする必要がある.そこで,PSS研究分野における体系的文献調査に基づき,PSSの各ライフサイクルフェーズで生じうる実装障壁を体系化した.
|