研究課題/領域番号 |
20J12384
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
東根 一樹 山形大学, 大学院理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | ガロア点 / ガロア群 / 自己同型群 / 代数曲線 / 射影 / 最大曲線 |
研究実績の概要 |
平面曲線Cに対し、射影平面の点P中心の射影がひきおこす関数体の拡大がガロア拡大であるときPをCのガロア点という。 2016年、深澤知氏(山形大学)により「ガロア点を2つもつ平面モデルの存在判定法」が与えられた。これにより「代数曲線の内在的条件(自己同型群とその作用の在り方)」と「2つの非特異ガロア点または、2つの外ガロア点をもつ平面曲線の在り方」とが結びつけられ、新たな観点からガロア点を2つもつ平面曲線の例が構成されている。また、具体例の構成においては最大曲線や位数の大きな自己同型群をもつ代数曲線などが用いられており、(特に正標数における)特徴的な内在的性質をもつ代数曲線の研究との関連性も見出されている。 本年度の成果として「特異ガロア点の場合も含んだ、内ガロア点を2つもつ平面モデルの存在判定法」が得られた。これは上記深澤氏の判定法を「ガロア点が特異点となる」場合にも適用可能なように発展させたものである。またその判定法において「群の軌道の状態」と「2つのガロア点を結んだ直線の状態」との結びつきを明らかにした。これにより「代数曲線の自己同型群とその作用の在り方」と「内ガロア点をもつ平面曲線の在り方」の結びつきをより深く明らかにすることができた。さらに、得られた判定法を射影直線に対して適用し、特異ガロア点をもつ平面有理曲線の例を3つ得た。このうち2つの例は、特異ガロア点を結んだ直線が片方の点での接線となっているような例であり、これまで知られていなかったものであった。 広島大学代数セミナー(2020年12月11日)、代数幾何ミニワークショップ「ガロア点、有限体、代数曲線」(2021年3月17日)において上記研究成果に関する講演を行なった。また、研究成果を記した論文は学術雑誌「Hiroshima Mathematical Jopurnal」に掲載決定済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べた「特異ガロア点の場合も含んだ、内ガロア点を2つもつ平面モデルの存在判定法」により、ガロア点を2つもつ全ての状況において「ガロア点を2つもつ平面モデルの存在判定法」を完成させることができた。特に、2つ以上の特異ガロア点をもつ平面曲線については、これまでのガロア点の研究において時折例が見受けられていたが、特異ガロア点自身に焦点を当てた研究は高橋剛氏(新潟大学)の研究が知られているのみであった。本年の研究成果により特異ガロア点の体系的な研究が進展することが期待できる。また研究実績の概要で述べたように「自己同型群とその軌道に関する内在的条件」と「ガロア点を結んだ直線の状態」の結びつきを明らかにすることができ、自己同型群研究とガロア点研究の結びつきをより深いものにすることができた。上記のように研究目的に沿う形で研究の進展があった。また、研究開始時の研究の概要に述べた①~③の内容に対する進展を期待できる結果でもあり、上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究においては、研究開始時の研究の概要に述べた①~③を解決することを目指したい。まず、本年に得られた判定法を最大曲線に適用し、特異ガロア点をもつ平面モデルの構成を試みる。その際に自己同型群の有理点集合への作用の在り方に着目し、作用の在り方が構成される平面曲線の幾何学的条件としてどのように現れるか考えることで、これらの性質がどのように結びつくのか考察する。また、non-tameな自己同型群(位数が標数pで割り切れる自己同型群)をもつ代数曲線に対しても判定法を適用する。自己同型群のp-群がガロア点の群として実現できないか調べ、Giulietti氏とKorchmaros氏によるp-群の位数を用いた代数曲線の分類の一般化を目指す。 また、最大曲線のHermite多様体への標準的な埋め込みのガロア部分空間について、次元の高い射影空間への埋め込みに対するガロア部分空間の決定のために、まず「3次元射影空間内の種数最大の最大曲線」に着目してガロア直線を考察する。このような最大曲線は平面モデルや、超平面との交わりの様子が研究されているので、それを利用しながら感覚をつかみ、ガロア直線の決定や新たな最大曲線の発見を目指す。 上記研究の過程で、種数と自己同型群による代数曲線の特徴づけができないかの考察も行っていきたい。 新型コロナウィルスの影響で、当初予定していた海外渡航や国内での出張も現時点では難しいと思われるので、オンラインでの研究発表などで対応したい。
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