研究課題/領域番号 |
20J12388
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浪花 晋平 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 光触媒 / 構造物性活性相関 / カップリング / 統計解析 / 過渡吸収 |
研究実績の概要 |
本研究は、半導体光触媒を用いた有機物の脱水素型カップリング反応における、光触媒活性とその構造及び物性の相関を定量的に明らかにすることを目的としたものである。 本年度は光触媒活性と、その支配的な因子である光触媒の比表面積と光励起キャリアの寿命の関係を、反応速度論モデルから導かれる単純な速度式で記述できることを見出した。21種類の異なるアナターゼ酸化チタン光触媒を用いてベンゼンの脱水素型ホモカップリング反応を行ったところ、反応速度は比表面積とともに概ね増加した一方で、その傾向から外れている試料も見られた。このことから、本反応における活性は比表面積以外の物性にも影響されることが分かった。昨年度の過渡吸収測 定から見積もられたキャリア寿命は試料によって最大10倍異なっており、このキャリア寿命の変化も活性に影響を与えていると考えられる。そこで、比表面積と キャリア寿命のそれぞれがどれだけ光触媒活性に影響を与えているかを定量的に議論するために、単純な反応速度論モデルに基づき統計解析を行った。その結果 光触媒活性は、比表面積とキャリア寿命を変数とする単純な速度式によって説明できることが分かった。この式から、比表面積とキャリア寿命は等価でともに重要な因子であり、二つの因子の積が光触媒活性を決定する重要なパラメータであることを提案した。この速度式は、ほとんどの光触媒反応に共通する三つの素過程のみを考慮した単純な反応速度論モデルから導かれる式ではあり、他の光触媒反応にも適用できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの検討で、ベンゼンを基質に用いた場合の光触媒活性が、比表面積とキャリア寿命を変数とする単純な反応速度式によって説明できることを見出した。一方で、この速度式は、ほとんどの光触媒反応に共通する三つの素過程のみを考慮した単純な反応速度論モデルから導かれる式ではあるが、他の光触媒反応にも適用可能かどうかの検討が十分に行われていない。
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今後の研究の推進方策 |
提案した速度式の適用範囲を調べるために、反応基質を他の有機物に変えて反応を行い、反応結果を説明することができるかどうかを調べる予定である。
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