研究実績の概要 |
本研究の目的は、ラドンを用いて石灰岩の複雑な水理特性を明らかにすることである。 第一年度は、ラドン収支を基にした地下水の滞留時間の解析手法を中心に研究し、その成果を論文として発表した。 本研究では、沖縄島南部の石灰岩地域をフィールドとし、石灰岩体中に形成された鍾乳洞の天井から滲み出す滴下水と沿岸部近傍の湧水(受水、米須の2箇所)を月に一度の頻度で採取した(現在も継続中)。水中ラドン濃度の分析は、琉球大学の液体シンチレーションカウンタ(Tri-Carb2910, TR, PerkinElmer)で測定している。 石灰岩体中の滞留時間は、得られた水中ラドン濃度をアウトプット情報とし、水中ラドンの主な供給源である土壌間隙水中のラドン濃度をインプット情報として、その濃度差とラドンの半減期(3.8日)を考慮して算出した。土壌間隙水中のラドン濃度に関しては、先行研究の既報値を用いて算出した。本研究で構築したラドン収支モデルを用いると、鍾乳洞では7~10日間の滞留時間となった。また、受水では12~21日間、米須では12日~19日間で地下水が石灰岩体中を滞留していることが算出された。水中ラドンを用いて石灰岩体中の滞留時間を検証した内容は、国際誌(International Journal of Environmental Research and Public Health, Vol. 18, No. 998, pp1-12, 2021)に掲載された。 今後の課題として、水収支(降水量と流出量)との整合性を図り、算出した滞留時間がリーズナブルかどうかを検証する。また、次年度は、土壌間隙水中ラドン濃度を算出するために必要な、土壌中のラジウム濃度の分析やラドン散逸係数、土壌粒子密度などのパラメータを室内実験を行い、実測する。
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