研究課題
離水サンゴ礁を主体とした第四紀琉球石灰岩は、南西諸島における伝統的かつ貴重な淡水資源を貯留する地層であるが、水利特性が複雑であることから、地下水の滞留時間(降雨から湧出までの時間)などについて不明な点が残されている。そこで本研究では、沖縄島南部の琉球石灰岩分布域を主フィールドとし、琉球石灰岩中に形成された鍾乳洞(玉泉洞)の天井部から滲み出す滴下水、および石灰岩体周縁部から湧出する地下水(受水湧水、米須海岸湧水)を毎月採水し、これらに含まれる天然放射性核種および安定同位体を用いて、水利特性の解明を試みた。令和3年度は、予定していたサンプリングや分析も順調に進められ、土壌・岩石中のウラン系列核種であるラドン(222Rn)およびトリチウム(3H)をトレーサーとした地下水滞留時間の解析手法を中心に研究が実施され、その成果は複数の論文として発表された。鍾乳洞内においては滴下水量の連続観測も実施し、ラドンを基にした解析結果による地下水滞留時間の検証を行った。成果の概要は次のとおりである。ラドン濃度の減衰開始位置を土壌層と下位の石灰岩体が接する境界とし、ラドン減衰式から降水の浸透時間を玉泉洞滴下水のデータを用いて算出した結果、玉泉洞を胚胎する石灰岩体については7~10日となった。同様に、受水では12~21日間、米須では12日~19日間の滞留時間と推定された。また、琉球石灰岩とこれを覆う土壌の透水係数・層厚に関する報告値を用いたモデル計算を行ったところ、玉泉洞における土壌層と琉球石灰岩体を合わせた浸透時間は約10~184日となった。さらに、玉泉洞内における滴下量(1地点のみ)と、玉泉洞近傍に所在するAMeDAS糸数(気象庁)における降水量の時間変動を比較したところ、降雨から約2~3ヶ月後に洞内滴下していると考えられ、ラドンを用いた推定値と矛盾のない結果となった。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Japanese Journal of Health Physics
巻: 56 ページ: 265~279
10.5453/jhps.56.265