研究課題/領域番号 |
20J12415
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤倉 浩平 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
|
キーワード | 相転移 / 重力波 / 暗黒物質 / ニュートリノ / 電弱バリオジェネシス |
研究実績の概要 |
本研究は、宇宙論的一次相転移により生成される重力波の将来観測を通じて、素粒子標準模型を超える新しい模型の検証を試みるものです。現在までに様々な模型が提案されており、素粒子標準模型に存在する多くの理論的・現象論的な問題を解決するものが有望であると考えられております。 そのような有力な模型において、そもそも宇宙論的相転移の次数がどうなっているかが不明でありました。相転移の次数は考える模型の物質の数などの詳細な情報に依存すると考えられているので、具体的に一つの模型に焦点を絞ることにしました。そこで、本年度では、Scotogenic Modelと呼ばれる模型で起きる電弱相転移について解析しました。この模型では、右手型のニュートリノと弱い相互作用をする新たなスカラー粒子が導入されており、それらは自然な暗黒物質の有力な候補となるとともに、小さなニュートリノの質量は輻射補正によって生成することができます。この模型において、当初の研究計画である重力波の信号を導出し、暗黒物質の残存量を説明できるパラメータ領域で、将来観測によって検証可能であることを示しました。また、電弱相転移が強い一次であると、電弱バリオジェネシスと呼ばれる機構で、宇宙のバリオン非対称性を説明できる可能性があります。そこで、電弱相転移が強い一次となるパラメータ領域についても明らかにし、電弱バリオジェネシスによるバリオン数生成の可能性を追求いたしました。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、宇宙論的一次相転移から生成される重力波の信号のみに着目しておりました。ところが、上記の成果は暗黒物質の残存量や地表で行われている実験からの制限についても考慮しており、素粒子標準模型を超える新しい模型の検証という意味でおおむね順調に進展したと考えられます。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、重力波のみでなく、宇宙論的一時相転移によるバリオン数生成による可能性についても追求していくつもりです。また、研究計画に記載していたPeccei-Quinn対称性の破れに準ずる相転移についても焦点を当てていきたい。
|