研究課題/領域番号 |
20J12425
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
二宮 小牧 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | Rho-GEF / PLEKHG4B / Cdc42 / 細胞間接着 / アクチン骨格 / アクトミオシン / アネキシン / 力覚応答 |
研究実績の概要 |
本研究は、細胞間接着を介する力覚応答の詳細な分子機構について、PLEKHG4Bと呼ばれるアクチン骨格制御因子Rho-GEFに着目しその理解を目指している。PLEKHG4Bは、同じRho-GEFであり力覚応答への関与が既に示されているSoloと構造が類似していることや、これまでの代表者の研究により細胞間接着形成過程のアクチン再構築に関与することが見出されていた。 本年度は主にPLEKHG4Bが接着形成に寄与する詳細な分子機構の解明に取り組み、以下の成果を得た。(1)PLEHG4Bは上皮細胞の基底面かつ細胞間接着付近に部分的に強く局在することが分かった。 (2)PLEKHG4Bは細胞間接着形成過程において(特に接着構造の成熟前に)、アクトミオシン系の収縮力を解消する働きを持つことで接着形成の進行に寄与していることを示した。(3)PLEKHG4Bは、Cdc42を活性化する自身のGEF活性の他に、RhoAのGEFである LARGとPDZ-RhoGEFの2つと相互作用し、それらのRhoA活性化能を抑制することで(2)の機構を実現している可能性を示した。(4)MS解析によって同定していたアネキシンA2がPLEKHG4Bの細胞間への局在に必要であることが分かった。(Journal of Cell Science, 2021)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はPLEKHG4Bの細胞間接着形成における基礎的な分子機構を明らかにし、国際誌に発表することができた。また、接着形成過程でPLEKHG4Bがアクトミオシンの収縮力の調節を行う適切なタイミングを認知する(一度上昇した収縮力を減弱させる)ための機構がある可能性や、基底面かつ細胞間付近への局在が見出され、細胞間での力の制御メカニズムを追究していくための知見が新たに得られた。三次元多細胞システムにおけるPLEKHG4Bの機能を検証するための管腔形成を用いた解析にも着手している。以上より、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画から大きな変更はなく、PLEKHG4Bの局在や活性の時空間的な制御機構に焦点を当てて解析を進め、最終的には細胞間接着における力覚応答機構の新たなモデルを提唱したいと考える。管腔形成を用いた解析には既に着手しており、多細胞の秩序形成におけるPLEKHG4Bの機能を明らかにすることで細胞間での力の制御の意義を明らかにしたい。また、BioID法を用いた新たな相互作用分子の同定実験では、細胞の力学環境の操作等を加えてその変化によるPLEKHG4Bの分子経路の探索を行う。細胞間のテンションセンサープローブの作成は当初の計画より遅れているものの、引き続き作成を続ける。
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