重力を時空の幾何学として捉える現代物理の描像はアインシュタインによって提案された一般相対性理論が発端である。この一般相対性理論は宇宙の様々な現象を正確に予測及び予言をし、重力理論として確固なる立場を得てきた。しかしこの一般相対性理論を基とする宇宙の標準模型では説明できない現象が近年観測されている。最たる例が宇宙の最初期に起こった加速膨張であるインフレーション機構や現在の宇宙に満ちている謎のダークエネルギーなどである。これらは一般相対性理論に基づく標準宇宙論では説明できないため、重力理論の拡張を示唆している。そこで、重力の時空の幾何学的性質に立ち戻り、一般相対性理論が用いるリーマン幾何学の理論的妥当性を再調査し、今後発展していく宇宙観測により精査するのが、本研究の非リーマン幾何学性の探求である。
本研究ではまずどのような非リーマン幾何学的重力理論は可能かを運動方程式の微分階数から見られる理論の安定性に注目することによって考察した。運動方程式の微分階数が高すぎると、初期条件が不足し、予言性が損なわれるからである。まずリーマン幾何学において、一般相対性理論の唯一性はラヴロックの定理によって補佐されている。しかし非リーマン幾何学への拡張が行われていなかった、そこでラヴロックの定理をより広い理論体系に拡張し結果、一般相対性理論の唯一性が崩れることを示した。またこの非リーマン幾何学における拡張されたラヴロックの定理で許される理論も抜け目なく構築できた。今後この理論の宇宙論的安定性を確かめ、観測によってリーマン幾何学の精査が行えると期待できる。
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