研究課題/領域番号 |
20J12625
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
河内 裕一 九州大学, 総合理工学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | イオンセンシティブプローブ / イオン温度揺動 / 電子温度揺動 / 条件付き抽出法 |
研究実績の概要 |
本年度は、データ解析に関する研究を中心に行い、計測器開発についても一定の進展があった。以下に①データ解析手法及び②計測器開発の具体的な研究実績を述べる。 ①条件付き抽出法による温度揺動・非線形エネルギー移送ダイナミクスの観測 温度揺動の観測へ向けて、テンプレート法による条件付き抽出法を開発した。本手法により、100Hzであるダブルプローブの時間分解能を改善し10kHzまでの電子温度揺動の時空間構造の観測に成功した。観測された電子温度揺動は電子密度揺動の1/3程度であり、振幅比がドリフト波のモデルとオーダーで一致していることが分かった。電子温度揺動が有限に存在するとき、ラングミュアプローブを使った揺動計測に影響を与えうるため、この電子温度揺動による影響を定量的に評価した。その結果、密度揺動への影響は小さく電子温度揺動の影響を無視できるのに対して、浮遊電位計測に大きな影響をあたえプラズマ電位に対して位相差を反転させるということが分かった。 条件付き抽出法は電子温度揺動の観測以外にもさまざまな計測やデータ解析にも適用が可能である。そこで、非線形エネルギー移送解析に条件付き抽出法を適用した。その結果、帯状流の周期に同期して異種の揺動が互いに競合し、競合は非線形エネルギーのやりとりによって引き起こされることが分かった。 ②複合型イオンセンシティブプローブの開発 イオン温度計測用のプローブとして、ガイド電極を4分割して輸送計測にも利用可能な複合型イオンセンシティブプローブを開発した。PANTAで本プローブ計測を適用し、イオン電流の選択捕集に成功したことを電流・電圧特性曲線より確認した。しかしイオン電流を多く集める構造のため、空間電荷効果が無視できず改良の必要があるということが明らかになった。この問題を解決するために新たにメッシュ付きイオンセンシティブプローブを設計した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、COVID-19の影響により、大学での計測器開発及び実験実施に制限があった。そのため、データ解析に関する研究を中心に研究を行った。特に、揺動パターン認識と条件付き抽出法を組み合わせて、電子温度揺動の時空間構造や、帯状流に同期した揺動間非線形エネルギー移送の評価に成功した。 計測器開発については、考案した複合型イオンセンシティブプローブを開発し、プローブ特性の評価を行った。その結果、イオン温度の計測に成功したものの、空間電荷効果によって電流・電圧特性曲線が歪んでいることが明らかとなった。イオン温度計測の精度向上へ向けて、空間電荷効果を低減する新規プローブを新たに設計した。
以上から、COVID-19の影響はあったが研究は期待通り進展したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はイオン温度観測に向けて、空間電荷効果を低減させるためのメッシュ付きイオンセンシティブプローブの開発し、本プローブを用いたイオン温度観測の実験を行う。メッシュ付きイオンセンシティブプローブの設計については既に終えているので、部品を揃えて組み立て完成させる。実験については、メッシュの幅と電極間の溝をパラメータとした実験を行い、最適なメッシュ幅及び溝を決定する。メッシュ付きイオンセンシティブプローブによって得られたイオン温度の絶対値はレーザー誘起蛍光法によって得られたイオン温度と比較し校正する。新規プローブによる計測に成功したのちに、昨年度開発した条件付き抽出法を新規プローブで得られた実験データへ適用し、イオン温度揺動および揺動駆動熱流束の評価を行う。
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