研究実績の概要 |
1つ目に,ボンガルツ完備化と呼ばれる多元環の表現論における概念の類似を団代数に導入した.多元環の表現論におけるボンガルツ完備化とは,τリジッド加群と射影加群のペアであるτリジッドペアに適切なτリジッドペアを直和することで特別なτ傾加群を構成する操作のことである.団傾斜代数のτリジッドペアと団代数の団はその組み合わせ構造と整合的な1:1対応を持つことに注目すると,同じような操作が団代数の団の部分集合でも可能なのではないかと考え,これを構成した.具体的にはまず,多元環の表現論におけるボンガルツ完備化の構成手順を,(団傾斜代数の加群を使って定義される)C行列という行列を使った形で特徴づけを行った上で,団代数に導入されているC行列を使ってその特徴づけの類似を考える形でボンガルツ完備化を定義した.そして,この団代数におけるボンガルツ完備化の操作が,先のτリジッドペアと団代数の団の1:1対応と整合的になっていることを証明した. 2つ目に,正整数解が団代数における変異の構造を持つ方程式について研究を行なった.元々,マルコフの方程式x^2+y^2+z^2=3xyzがそのような構造を持つ方程式として知られていたが,さらに(x+y)^2+(y+z)^2+(z+x)^2=12xyz,次いでこの2つの方程式の一般形であるx^2+y^2+z^2+lxy+myz+nzx=(3+l+m+n)xyz(l,m,nは0以上の整数)の正の整数解が変異構造を持つことを示した.さらにこの方程式の性質を利用することで,方程式x^2+y^4+z^4+2xy^2+ky^2z^2+2z^2x=(7+l+m+n)xyzの正整数解についても,別の団代数の変異の構造を持つことを明らかにした.
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