研究課題/領域番号 |
20J12743
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
瀬古 祐吾 近畿大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 真社会性昆虫 / 化学的防除 / 採餌行動 |
研究実績の概要 |
日本では近年、環境省により遅効性の薬剤ベイトを用いたアルゼンチンアリの防除が実施され、東京都などでは局所的な根絶事例も報告されつつある。一方、アルゼンチンアリが薬剤ベイト処理区において顕著な個体数減少を示すものの、同所的に生息する在来アリ類の種・個体数が増加するという現象も同時に報告されている。このことは、アリ類の薬剤作用メカニズムへの理解が不十分であることを示唆するものである。本研究では、アリ類のワーカーによる資源獲得、およびコロニー全体への資源分配が、コロニーレベルでの薬剤曝露を大きく左右すると考え、本種をはじめとするアリ類の資源獲得・分配能力の定量化を行った。まず、「コロニーレベルにおける薬剤ベイト効果の種間差」という現象の一般化を図るため、兵庫県神戸市において薬剤ベイト処理区におけるアリ類個体数の変動を調査した。その結果、先の報告と同様の現象を確認することができた。次に、資源を獲得する能力を評価するため、室内でアリ類の採餌行動を観察した。その結果、アルゼンチンアリが他のアリ類に比べ、最も資源の発見および獲得に要する時間が短く、かつ単位時間あたりに獲得した資源の重量も多くなることが判明した。さらに、獲得した資源を巣内で分配する能力を、アリ類ワーカーやブルードのCN安定同位体比から推定することを試みた。その結果、ワーカーの安定同位体比が、同巣のブルードのものよりも多様となる傾向を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、「コロニーレベルにおける薬剤ベイト効果の種間差」が生じるという東京都における報告事例を、異なる調査地でも確認することができた。このことから、本現象がアリ類の薬剤ベイトへの応答として一般的なものであるという結果を得ることができた。また、野外において薬剤の影響を受けやすいアルゼンチンアリが、他のアリ類と比べ特徴的な採餌行動を示すことが確認でき、おおむね仮説通りとなった。安定同位体比を用いた資源を分配する能力の評価に向けても、「ワーカーの同位体比のばらつきは、ブルードの同位体比のばらつきよりも大きくなる」という、仮説を支持する結果を得ることができたた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年6月まで、野外における薬剤ベイトへのアリ類の応答を調査する。2019年7月から得られた2年間の個体数データを用い、薬剤ベイトに対するアリ類の応答を、種組成の変化や、効果量の違いによって評価する。可能であれば、アリ類のコロニーを単位とした薬剤ベイトへの応答を試験する。また、対象とするアリ類の一部(クロヒメアリ等)の安定同位体比分析を随時実施し、得られた結果と照らし合わせるための行動観察データ(巣内の栄養交換)を取得する。
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