研究課題/領域番号 |
20J12750
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田中 智之 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 非線形分散型方程式 / 非線形波動方程式 / 初期値問題の適切性 / 解の寿命 |
研究実績の概要 |
今年度は、以下の2点の研究を行った。 (1) 空間3次元でのハートリー型の非線形項を持つ波動方程式に対する時間大域可解性と解の寿命の評価を行った。ハートリー型非線形項のポテンシャルと、初期値の空間遠方での減衰度合いが共に臨界な場合に、解は有限時間爆発するであろうと予想されていた。本研究では、この予想を肯定的に解決し、さらに上下からの評価を得ることで、解のライフスパンに関する最適な評価を与えた。ライフスパンの下からの評価では、光錐からの近さに着目して非線形項を評価することがポイントであった。このアイディアを応用して、初期値の空間遠方での減衰度合いが共に臨界な場合に小さな初期値に対する時間大域解の存在を証明した。この結果は、論文雑誌Discrete and Continuous Dynamical Systemsに掲載済みである。 (2) 定数係数を持つ高階シュレディンガー方程式に対する初期値問題の分類を行った。本研究では、与えられた定数係数の列に応じて初期値問題が(i)分散型、(ii)放物型、(iii)楕円型のいずれかに分類されることを示した。ここで、(i)分散型では、時間正負両方向に初期値と同じ滑らかさを持つ解が存在する。(ii)放物型では、いずれかの時間方向にのみ解が存在し、かつ熱方程式の解のように時間が少しでもたてば解が滑らかになる。(iii)楕円型では、楕円型方程式が発展方程式として解けないように、どちらの時間方向にも解が存在しない。証明では、(ii)あるいは(iii)を引き起こす特異性の係数に着目した解析と、それに基づく補正項付きのエネルギー不等式を導出することがポイントである。この結果は、論文雑誌Osaka Journal of Mathematicsに掲載済みである。本研究で得られた補正項の構成に関する理解は、定数係数方程式や非線形方程式を考える際の指針となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変数係数の研究において、初期値問題を分類するための困難な点が見つかった。この問題の克服のために定数係数の場合について研究を行い、変数係数の研究に向けた足がかりを得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
定数係数の研究で得られた理解をもとに、変数係数の方程式の研究で見つかった困難な点を解消することを試みる。更に非線形方程式についても考え、初期値問題の適切性を分類することを考える。
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