研究課題/領域番号 |
20J12767
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
柴山 惟 北海道大学, 医学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | ステロイドホルモン / 副腎 / 糖尿病 / 肥満 / DHCR24 / ペリリピン1 |
研究実績の概要 |
肥満糖尿病モデルマウスであるdb/dbマウスとコントロールとしてdb/+マウス各3匹を10週齢の時点で安楽死させ、副腎の遺伝子発現をDNAマイクロアレイで解析したところ、22206遺伝子について結果が得られた。db/dbマウスでdb/+マウスと比較して1.5倍以上に上昇していた遺伝子が967個、-1.5倍以下に低下していた遺伝子が1489個であった。パスウェイ解析では代謝に関与する経路、特に脂肪酸の生合成ならびに解糖系に属する遺伝子の発現低下が示唆された。パスウェイ解析で得られた脂質・解糖系に関連する遺伝子について個別に解析したところ、インスリンシグナル伝達に重要なIns1、Slc2a4の発現が低下しており、インスリンシグナルの障害とブドウ糖取り込みの低下が示唆された。脂肪酸取込みに関与するCd36、Slc27a4の発現は増加し、脂肪酸分解酵素Acsl4と脂肪酸ω酸化に関与するCyp4a14も増加し、脂肪酸合成に関与するScd1、Fasn、Elovl3の低下を認め、脂肪酸分解亢進によるアセチルCoAの増加が示唆された。de novoコレステロール合成系の酵素であるDhcr24の発現は増加しており、アセチルCoAからのコレステロール合成が増加していることが示唆された。リポ蛋白取込みに関与するLdlrの発現も増加しており、コレステロールの細胞内合成と細胞外からの取込みの双方が増加し、その結果コレステロールを基質として合成される副腎ステロイドホルモンの合成が増加することが示唆された。ヒト副腎癌細胞株HAC15細胞にDhcr24阻害薬であるU18666aを20μM/U、40μM/Uで48時間負荷したところ、アルドステロン濃度はそれぞれ0.34倍、0.58倍に低下しアルドステロン合成抑制効果が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初ペリリピン1の発現について検討する予定であったが、ペリリピン1の発現はマイクロアレイ法では増加を認めず、遺伝子発現ではなく蛋白の代謝により発現量が制御されている可能性が考えられた。上述のコレステロールの細胞内生合成により産生されたコレステロールはステロイド合成だけでなく細胞内での脂肪滴に蓄積されることが推測されるため、代謝異常を是正することで副腎でのアルドステロン合成を正常化できるかを検討する方針とした。
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今後の研究の推進方策 |
上述の結果よりdb/dbマウスでの副腎内代謝変化、特にコレステロール生合成経路の活性化がアルドステロンを含むステロイドホルモン産生を亢進させることが示唆された。細胞実験の結果を踏まえDHCR24阻害薬(U18666A)のdb/dbマウスへの投与実験を行い、ステロイドホルモン産生ならびに標的臓器での作用を抑制できるかを次年度に検討する方針とした。
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