研究課題/領域番号 |
20J12793
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大長 一帆 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | セルロースナノファイバー / 結晶性 / XRD / NMR / セルロース科学 |
研究実績の概要 |
次世代のバイオマス素材として、セルロースナノファイバー(CNF)が脚光を浴びている。CNFは、高強度・高弾性率・低熱膨張率等の優れた特性を併せもっている。これらの特性はセルロースの結晶性に由来しており、高結晶性なほど高性能である。当該分野では、確証のない「もっともらしい構造」がCNF構造として浸透しており、仮説に仮説を重ねた議論が散見され、実用化に向けた課題解決や機能開拓にも支障をきたしている。そこで本研究では、CNF固有の機能・性能に係わる「結晶性」に着目し、CNF構造の精密解析を進めた。 本年度は、CNFの分散・会合と結晶性との相関を解析し、1)細胞壁の解きほぐしが進み、CNFの分散性が高まると、結晶性が低下することや、2)分散したCNFを再度会合させると、分散により低下した結晶性が回復することを見出した。すなわち、CNFの結晶性はCNF間の界面構造が支配していると言える。これまで、CNFの結晶性を操作した例はなく、一度低下した結晶性は不可逆であるというのがこれまでの理解であった。CNFの分散と会合はCNF生産プロセスに必ず組み込まれる。したがって、本研究で見出した新規な現象は、CNFの実用化を推進する基盤技術の構築に貢献すると考える。 以上の研究成果について、学会や依頼講演等で発表した。また、結果の一部を学術論文誌と総説としてまとめた。さらに、これら一連の研究成果が認められ、東京大学農学生命科学研究科長賞・ACS CELL Division Graduate Student Awardの受賞に至った。CNFの結晶性に関する共著論文も執筆した。上記の共著論文は、研究科HPでもプレスリリースを行い、研究成果を広く発信した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に従った進度で研究が進んでおり、論文投稿を達成しているため。
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今後の研究の推進方策 |
CNFの結晶性と物性との相関を解析し、CNFの実用化に向けた課題解決に取り組む。
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