研究実績の概要 |
本研究では、深層学習の学習過程をダイナミクスとしてとらえ高次元力学系上に構成する汎用的な設計論の構築を目指している。同時に学習過程を力学系上に実装する際に要求される制約条件を明らかにし学習機能の本質に迫る。本年度はその第一歩として、学習過程をニューラルネットワーク上で表現するアルゴリズムの開発に注力し、そのための基礎的な評価実験を行った。その結果、単純な設定において、教師あり学習の過程をニューラルネットワークのダイナミクスとして表現することに成功した。次年度以降は、この構成アルゴリズムを基に研究をより大きく展開していく予定である。 また並行して、脳活動において広く観察されるカオス現象の情報処理における役割を明らかにするために、高次元カオス力学系上にカオス的遍歴と呼ばれる非線形現象の局所的なパターンと大域的な遷移則の双方を自在に設計する手法を提案した [K. Inoue, et. al., Science Advances, 2020.]。この高次元カオス力学系の制御方法は、自発的な行動生成を行う人工知能の実装の他、物理系のカオスダイナミクスを積極的に活用するニューロモーフィックデバイスの制御に貢献することが期待される。 その他、やわらかいデバイスの情報処理媒体としての潜在的な能力を評価するため、柔軟体の運動を動画像から抽出する手法を開発し、Soft robotics誌においてツールのソースコードとともに公開した [K. Inoue, et. al., Soft Robotics, 2021.]。本研究で開発されたツールはソフトロボットの運動制御のみならず軟体動物の運動抽出等にも応用でき、ソフトロボティクスや物理レザバー計算にとどまらない幅広い分野で活用されることが期待される。
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