本研究課題における屈折率設計において、2021年度は主に、ナノ粒子の導入についての調査を行う予定であった。導入するナノ粒子としては、これまで用いてきたシリカよりも高い屈折率が期待される、ダイヤモンドのナノ粒子を利用するという予定であった。 しかし、2021年度においてダイヤモンドナノ粒子について調査を行った結果、低散乱のために粒子サイズが小さいダイヤモンドは、表面の炭素の結晶構造がダイヤモンドから変化してしまう可能性があることを発見した。そこで、ダイヤモンドに代わるナノ粒子材料として、チタニアを用いることとした。チタニアは住宅などの壁面に光触媒として使用されたり、また日焼け止めの主成分としても使用されるなど、比較的ナノ粒子としての利用が普及しており、高品質なナノ粒子の入手が容易である。インクジェットによるマイクロディスク構造の作製を想定して、このようなチタニアのナノ粒子が分散した溶液状態でのサンプルを用いることとした。チタニアナノ粒子が分散した溶液において、まず初めにはチタニアナノ粒子を単体で用いた場合の屈折率について明らかにする必要がある。これは、屈折率デザインにおいて、チタニアナノ粒子を混合することでどの程度の屈折率変化が得られるのかを理論的に検討するためである。 実験としては、チタニアナノ粒子が分散した溶液を4種類試用し、うち2種類において製膜することに成功した。この薄膜を分光エリプソメーターを用いて屈折率分散を測定したところ、波長600nmにおいて1.75及び1.81という屈折率を得た。これは、2020年度のシリカナノ粒子のみを用いた場合の屈折率1.1~1.3、及びそこに接着剤を混合した場合に最大で0.08程度屈折率が上昇する、という結果と比較すると、非常に大きな値である。 また、2021年度は、これまでの屈折率計算についての成果をまとめた論文を投稿した。
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