[1. PITの細胞傷害メカニズムの解明] これまでに、光免疫療法(Photoimmunotherapy; PIT)はがん細胞の細胞膜を物理的に傷害することで免疫原性細胞死(Immunogenic cell death; ICD)を誘発することを明らかにした。ただし、PIT薬剤は抗体複合体であるため、受容体に結合した後は細胞内へ徐々に内在化されるが、内在化した薬剤が細胞傷害性を示すかは明らかとなっていなかった。そこで、各種放射線治療と併用する前にまず、PITの細胞傷害メカニズムのさらなる解明に取り組んだ。その結果、内在化したTra-IR700も照射量が大きい場合には細胞傷害性を示すが、PITでは主に細胞膜に結合しているTra-IR700が作用しており、どちらもICDを誘発することが示された。 [2. X線外照射とPIT併用時の治療効果および免疫の活性化の検討] がん免疫の観点から両治療法の併用が盛んに行われつつある。しかし、腫瘍にX線が照射されることで放射線感受性が高い免疫細胞が損傷を受ける可能性が指摘されている。そこで、がん免疫に各種放射線治療が与える影響の解明を目指し、放射線外照射に関する検討を行った。その結果、放射線外照射とPITを組み合わせることによって、局所ではそれぞれの単独治療よりも治療効果が高いことがわかった。しかし、今回の実験系では、腫瘍抑制性の免疫細胞すべてが増加したわけではなく、また、免疫の活性化による治療効果も現れなかった。今後は免疫チェックポイント阻害剤の投与によって腫瘍内の免疫抑制性環境を変化させたモデルを用いることで、放射線治療とがん免疫の関連の解析をさらに進める予定である。
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